注目の論文
鉄過剰の管理
Nature Genetics
2009年3月2日
Managing iron overload
骨形成の誘導に関与する増殖因子が、鉄代謝において、これまで予想されていなかった役割を担っていることが、Nature Genetics(電子版)に報告される。
遺伝性ヘモクロマトーシスは、主要な鉄代謝調節ホルモンであるヘプシジンをコードする遺伝子と細胞表面受容体であるヘモジュベリンをコードする遺伝子の変異を原因とする疾患である。今回、INSERM(フランス・ツールーズ)のM-P Rothらとマサチューセッツ総合病院(米国・ボストン)のJ Babittらは、これまで骨と軟骨の形成を誘導することで知られていたBMP6タンパク質が、感知される鉄濃度に応答して、ヘモジュベリンと結合し、肝臓で産生されるホルモンであるヘプシジンの放出を促進して、マウスの鉄過剰を防止することを、それぞれ独自の研究で明らかにした。
ヘプシジンの欠乏が続くと、食餌からの鉄分の過剰吸収が起こり、肝臓やその他の組織に鉄分が沈着し、その結果として、臓器障害や機能不全が起こる。こうした特徴は、Bmp6遺伝子の選択的破壊によって肝臓や心臓、膵臓に重度の鉄過剰を起こしたマウスでも同じように観察された。
鉄分によってBmp6遺伝子の発現がどのように調節されるのかという点は、今後の研究に委ねられる。この点が解明されれば、鉄分がヘプシジンの発現に及ぼす影響についての理解も深まるだろう。一方、BMP6に変異のある患者に関する研究報告はないものの、BMP6のように作用する薬剤が、鉄過剰症を管理するための有用な新治療法となる可能性が生まれている。
doi: 10.1038/ng.320
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