注目の論文

胃酸のレベルが、骨の健康状態を決める

Nature Medicine

2009年5月18日

Gut acid levels determine healthy bones

胃の酸性度が、健康な骨の維持に必要なカルシウムレベルの調節に、重要な役割を果たしているという。この研究は、大理石骨病という骨の病気の患者だけでなく、消化管潰瘍といった胃腸の病気の治療としてプロトンポンプ阻害薬を服用している患者にとっても、重要な意味をもつ可能性がある。

大理石骨病は通常、骨量が病的に高くなっているがosteopetroricketsというカルシウムレベルが低いために骨が脆くなる症状が、一部の患者にみられる。最近、大理石骨病にTCIRG1遺伝子の変異がかかわっているとの証拠が得られている。この遺伝子がコードしているのはプロトンポンプのサブユニットの1つで、破骨細胞とよばれる骨吸収細胞の適切な活性に必要である。Michael Amlingたちは、今回、Tcirg1変異体マウスがosteopetroricketsの表現型をもつことを明らかにした。一方、これまでの結果から、同様に破骨細胞の活性を制御する他の遺伝子が変異したマウスは、大理石骨病の表現型だけしか示さないことがわかっており、これら2つが別個の病気であることが示唆される。

Amlingたちは、どちらの病気でも破骨細胞の機能が変化しているのに、どうしてosteopetroricketsは一方だけで起こり、もう一方では起こらないのかも調べた。すると、Tcirg1は胃の壁細胞でも発現されていて胃のpHレベルを制御していること、Tcirg1変異マウスは胃のpHが異常に高いことがわかった。これらの結果より、osteopetroricketsの表現型が、骨吸収の異常と、おそらく食物中からのカルシウムの吸収に影響する胃のpH異常との組み合わせで説明できることが示唆される。

今回の研究から、プロトンポンプの活性異常が起こると、細胞の種類によっては独特な骨の病気に結びつくことが明らかになった。これらの結果は、プロトンポンプ阻害薬を服用している患者にとって、臨床的に大きく関係してくるかもしれない。プロトンポンプ阻害剤はさまざまな消化器系の症状の治療に使われるが、これによって胃のpHが変化するとカルシウム吸収が減少し、骨が弱くなる可能性があるからである。

doi: 10.1038/nm.1963

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度