乳がんの新しい予後マーカー
Nature Genetics
2008年5月31日
New prognostic marker for breast cancer
乳がんの女性患者において、特に一般的に用いられているタイプの化学療法による治療を受けた後の生存率が低い人を強力に予測する遺伝子多型が同定された。この成果を報告する論文は、Nature Genetics(電子版)に掲載される。
NQO1という酵素は、酸化ストレスによる損傷から細胞を守っている。NQO1遺伝子の多型の1つであるNQO1*2は、ヒト集団における出現頻度が4~20%で、NQO1酵素の産生を効果的に阻害する。デンマークがん協会(コペンハーゲン)のJ Bartekとヘルシンキ大学中央病院(フィンランド)のH Nevanlinnaらの研究チームは、フィンランドの乳がんの女性患者2,000人以上について遺伝子型の判定を行い、乳がんの経過と治療の結果を追跡調査することで、乳がん治療の予測因子としてのNQO1*2を初めて調べた。
遺伝子多型NQO1*2の2つのコピーをもつ女性がエピルビシンの投与を受けた場合の生存率は、わずか17%で、1つのコピーしかもたない女性やNQO1*2をもたない女性の生存率が75%だった。また、NQO1*2をもっていることは、転移後の生存率にも有意な影響を及ぼす。NQO1*2をもつ人の数が多く、特にアジアでは各国の人口の最大20%にもなっていることから、Bartekら論文著者は、NQO1遺伝子の型が、乳がん治療の重要な予測因子となる可能性があるという考え方を示し、エピルビシンによる治療と別の治療方法を比較する無作為化前向き臨床試験を実施して、NQO1*2の予測因子としての有効性を確認することを提案している。
doi: 10.1038/ng.155
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