【進化】初期ヒト族の石器製作と言語の進化
Nature Communications
2015年1月14日
Evolution: Ancient tool makers and the evolution of language
およそ250万年前に始まったオルドヴァイ式石器の製作が人間の言語と教え方の進化に影響を与えた可能性を示す論文が、今週掲載される。この論文では、初期ヒト族が石器製作に依存していた結果、より高度な知識伝達形式が進化によって選択されたことが示唆されている。
石器作りに熟練していた初期ヒト族は、1個の岩石をハンマーストーン(石のハンマー)で叩くことで鋭利な破片を数多く作り出していた(石器製作)。こうした石器の遺物を見ると、石器の製作、保守と修理が系統的に行われていたことは明らかで、学習と訓練が行われていたことも示唆されている。しかしオルドヴァイ式石器の製作が人間の言語に影響を及ぼしたかどうかについては論争がある。オルドヴァイ技術は70万年以上停滞していたとされており、そのことが言語の存在と整合しないと考えられるためだ。
今回、Natalie Uomini、Thomas Morgan、Kevin Lalandたちの研究グループは、実験的研究を行い、オルドヴァイ式石器の製作における5つの社会的学習メカニズムの能力を調べた。この研究には、合計184人が参加し、6000点以上の石器を製作した。それぞれの石器は、計量、計測され、品質評価も行われた。また、この研究チームは、情報伝達手段別に伝播率を調べた上で、指導方法の改善(特に言語の使用)に伴って石器作りの腕が上がったことを明らかにした。その一方で、まねや模倣によって伝播率が上昇することを示す証拠はほとんど得られなかった。Uominiたちは、オルドヴァイ式石器に対する依存によって「教えること」、そして究極的には言語に有利に働く選択が生じたとする人間の進化に関する学説が今回の研究によって裏付けられたという見解を示している。ただし、Uominiたちは、実験における学習期間を長くすると、伝達方法の能力が影響を受ける可能性も指摘している。
さらにUominiたちは、オルドヴァイの技術が存続した理由として(認知機能の進化の他の側面に加えて)社会的伝達メカニズムが未発達だった点を挙げた上で、より高度なアシュール式石器が170万年前に登場したことは、高度な伝達方法(例えば祖語)の進化があったことを示しているとも指摘している。
doi: 10.1038/ncomms7029
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