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免疫学:IL-1β+ マクロファージは膵臓がんの病因となる炎症を悪化させる

Nature 623, 7986 doi: 10.1038/s41586-023-06685-2

膵管腺がん(PDAC)は、治療抵抗性が高い致命的な疾患である。膵臓腫瘍の微小環境内には炎症性シグナルと免疫調節性シグナルが共存しており、このことが修復応答と細胞傷害応答の調節異常を引き起こす。腫瘍関連マクロファージ(TAM)はPDACで重要な役割を担っているが、TAMの多様性が治療法の開発を妨げてきた。本論文で我々は、単一細胞ゲノミクスおよび空間ゲノミクスを機能的実験と組み合わせ、膵臓がんでマクロファージが果たす機能を明らかにする。我々は、マクロファージのサブセットでインターロイキン1β(IL-1β)を発現するTAM(プロスタグランジンE2〔PGE2〕と腫瘍壊死因子〔TNF〕の局所的な相乗効果によって誘導される)と腫瘍細胞との間にある炎症性ループを明らかにした。IL-1β+ TAMと物理的に近い位置にあることは、PDAC細胞のサブセットの1つによる炎症の再プログラム化と病因性獲得に関連していた。このような細胞の出現は膵臓腫瘍発生での早期事象であり、患者では疾患進行と予後不良に関連する持続的な転写変化につながる。PGE2もしくはIL-1βの活性を阻害すると、TAMの再プログラム化が誘導され、腫瘍細胞の内因的および外因的炎症と拮抗して、それがin vivoでのPDAC制御をもたらした。PGE2–IL-1β経路を標的とすることは、膵臓がんでの免疫動態の再プログラム化のための予防戦略あるいは治療戦略を可能にすると考えられる。

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