Nature ハイライト
Cover Story:火山の下で:ニーラゴンゴ山の予期せぬ噴火の背後にある機構
Nature 609, 7925
表紙は、コンゴ民主共和国のニーラゴンゴ山にあるむき出しの溶岩湖の、破局的な流出が起こる前の様子である。火山噴火の準備段階は、地球物理学的信号や地球化学的信号で特徴付けられることが多く、早期警報システムの基盤を形成できる。しかし、今回D Smittarelloたちが報告しているように、2021年5月22日に起きたニーラゴンゴ山の噴火はこれに当てはまらなかった。事実上の前兆なしに、山腹に亀裂が生じて6時間にわたる噴火が始まったのである。噴火の開始に関する標準理論に反して、ニーラゴンゴ山では噴火の数日前ではなく数日後に地震活動が始まった。著者たちのモデル化研究は、火山体の崩壊によって噴火が駆動され、その後地下約500 mにある長さ25 kmの岩脈を通してマグマが貫入したことを示唆している。また、主な有感地震活動の原因は、岩脈の発達であった。著者たちは、こうした事象の予測は極めて難しいと指摘し、かすかな前兆信号とそうした危険に対する事前準備をより重視すべきだと提案している。
2022年9月1日号の Nature ハイライト
原子核物理学:予想外に多かった陽子同士の短距離相関
化学工学:高分子膜に開いた高選択性の真っ直ぐな孔
化学:タンデム型戦略による窒素還元反応の効率の向上
気候科学:新生代の温暖期における海洋酸素濃度の上昇が意味すること
環境社会科学:森林の保全は計画的に
古生物学:700万年前のヒト族における二足歩行
コロナウイルス:廃水での塩基配列解読によるSARS-CoV-2の監視
神経科学:脳–表現型モデルが万人に当てはまらない理由
神経科学:行動切り替えの神経機構
発生生物学:霊長類in utero胚の空間的転写産物プロファイリング
微生物学:レトロンによる抗ファージ防御機構
内分泌学:PRDM16の安定性の調節機構
免疫学:3型自然リンパ球の新しいサブセット
免疫学:感染における単球と好中球の役割
免疫学:T細胞からのRASA2除去はがんでのT細胞療法の有効性を高める
生物物理学:クロマチン相転移は有糸分裂染色体に微小管が突き刺さるのを防いでいる
生化学:Cas9のコンホメーション移行による活性化機構
構造生物学:アーキアの巨大な環状天然物の合成に関わる酵素