Nature ハイライト
Cover Story:意識の変容:マジックマッシュルームがヒト脳に実際に及ぼす実際の影響
Nature 632, 8023
シロシビンは、マジックマッシュルームに含まれる幻覚作用のある化合物だが、大うつ病や嗜癖などの治療薬としても有望視されている。今回J Siegelたちが、この薬物によって引き起こされる脳の状態と、それが時間とともにどのように変化していくかを明らかにしている。彼らは、7人の健常成人を対象に、高用量のシロシビンを単回投与した後、その影響を3週間にわたりMRIスキャンで繰り返し評価し、さらに4人については6カ月後にも評価を行った。その結果、シロシビンは脳内の異なる領域の活動を非同期化させることで、大脳皮質と皮質下の神経結合を著しく乱すことが分かった。この変化は、空間、時間、自己の感覚の形成に関与する脳の部分で最も強く、この乱れの一部は数週間続いた。著者たちはまた、単純な視覚–聴覚一致課題の完了によって、脳への薬物の影響を軽減できることも見いだした。こうした結果から、シロシビンは、脳の可塑性を高める可能性があることが示唆され、強固な不適応的思考パターンに関連する症状の治療に有益である可能性がある。
2024年8月1日号の Nature ハイライト
惑星科学:高離心率で逆行しているホットジュピターの前駆天体
フォトニクス:フォトニック格子上で生じるディラック質量
超伝導:ハイブリッド超格子の非従来型超伝導
光学:バーストタイコグラフィーを用いたX線トモグラフィー
材料化学:吸着材に基づくCO2捕捉を最適化するためのフレームワーク
古気候学:最終氷期極大期に今よりも深かった北大西洋亜熱帯循環
環境科学:地下水に支えられた乾燥地の生態系の危機
考古学:チベット高原のデニソワ人はヤギを生活の糧にしていた
集団遺伝学:新石器スカンジナビアにおけるペストの蔓延
遺伝学:複数の祖先系集団での世界的な遺伝子発現解析のオープンアクセスデータセット
神経科学:アデノシンがアストロサイトの神経活動依存的代謝活性を制御する
神経科学:日長に対する適応は神経伝達物質の配置換えで
加齢:IL-11の抑制によってマウスの寿命が延びた
植物分子生物学:植物の転写因子に含まれる活性化ドメインの特定
微生物学:バイオフィルム形成性の腸内病原菌を溶解するエンドリシン
がん治療:がんワクチンが誘導する抗腫瘍応答抑制性のCD4+ T細胞
生物工学:大型のジストロフィンを筋で発現させて筋機能を向上させる
発生生物学:精原幹細胞のクローン拡大に必要なTERT
構造生物学:NMDA受容体の開口機構