Nature ハイライト
量子物理学:反強磁性体の異常性に見られる異常
Nature 527, 7577
一般に観測されるホール効果は、磁場の存在下で伝導体に電流を流すと横方向に電圧差が現れる現象である。強磁性物質はもともと磁性が備わっているため、異常ホール効果と呼ばれる同様の現象が、外部磁場が存在しなくても観測されることがある。しかし、異常ホール効果は、ゼロ磁場状態で正味の磁化が存在しない反強磁性体では通常起こり得ないと考えられていた。今回、中辻知(東京大学)たちは、異常ホール効果の詳細な起源に関する最近の理論的概念に着想を得て、反強磁性物質であるMn3Snにおいても、その磁気モーメントが通常とは異なる複雑な配置をとる結果、直観に反する異常ホール効果が見られることを示している。この効果は、強磁性金属に匹敵するほど大きいだけでなく、弱い磁場を印加することで容易にスイッチングできる。これらの特性の組み合わせは、スピントロニクスへの応用に役立つと思われる。
2015年11月12日号の Nature ハイライト
神経科学:不安と恐怖の調節機構
がん:遠隔転移は酸化ストレスによって減少する
分子生物学:BCL11Aエンハンサーの破壊解析
構造生物学:Na+活性化K+チャネルであるSlo2.2の構造
惑星科学:近傍にある岩石質で地球サイズの惑星GJ 1132b
量子物理学:離れているのにエンタングルした中性原子
量子物理学:反強磁性体の異常性に見られる異常
材料化学:液体なのに多孔性の材料
地球力学:最初の沈み込み帯
経済学:気候温暖化のコスト
DNA:DNA損傷部位での正電荷の役割