Nature ハイライト
微生物生態学:腸内微生物相に与える食餌の影響
Nature 529, 7585
我々の食餌は、人類の歴史を通じて大きく変化してきた。例えば、西洋型の生活様式の集団における繊維摂取の減少などは、腸内微生物相の多様性の一般的な減少と並行している。食物繊維に豊富に含まれるMAC(microbiota-accessible carbohydrate)は遠位腸内微生物相にとって炭素やエネルギーの主要な供給源である。今回、低MAC食を摂取させたマウスでは、腸内微生物相の多様性が減少すること、そしてこの影響は数世代にわたって伝えられ、増悪していくことが分かった。つまり存在量が少ないタクソンは、次の世代へと移行するにつれますます減少していく。特に、食物繊維を利用する能力の高いバクテロイデス目のタクソンではこれが顕著であった。この表現型は単に食餌中にMACを再導入するだけでは回復せず、回復には微生物相の糞便移植によって、消失した複数のタクソンを補充する必要がある。これらの知見から、ディスバイオーシス(腸内微生物相のバランス異常)が見られる人では、食餌の変更だけで健康な微生物相を回復させることはできない可能性が示唆される。
2016年1月14日号の Nature ハイライト
進化生態学:一目で分かる植物の多様性
がん:がん幹細胞のサポート機構
宇宙論:「再電離している」銀河の観測
有機化学:鉄触媒を用いたトリチウム標識法
古気候学:近い将来に新たな氷期が訪れることはなさそうだ
植物生態学:樹木の競争力に影響を及ぼす重要な形質
微生物生態学:腸内微生物相に与える食餌の影響
心血管生物学:FOXO1は血管増殖のチェックポイントの1つである
免疫学:2型免疫における上皮刷子細胞
構造生物学:ホロ非リボソームペプチドシンテターゼ