Research press release

気候変動:熱帯林の温度が上がり過ぎると光合成能力が失われるかもしれない

Nature

熱帯林の高木の葉のごく一部が、光合成が正常に働く上限の温度(限界温度)に近づいている可能性のあることを報告する論文が、Natureに掲載される。現在、限界温度を超えている葉は全体の0.01%と推定されているが、熱帯高木で閾値と考えられる温度の範囲に関しては、不確かな点がある。今回のモデル化研究では、熱帯林が、想定された転換点に達するまでにあと3.9℃の気温上昇に耐えることができると予測され、これからの気候変動の下で熱帯林の行く末を守るための行動が必要なことが示唆された。

熱帯林は、非常に重要な炭素貯蔵庫の役割を果たし、世界の生物多様性の大部分を保持しており、気温の上昇に特に感受性が高いと考えられている。熱帯高木の光合成機構の機能不全が始まる限界温度は平均で約46.7℃だが、熱帯の植生における葉の温度がこの閾値に達しているか、または近い将来に気候変動の下で閾値に到達するかは、よく分かっていない。

今回、Christopher Doughtyらは、地球規模(ブラジル、プエルトリコ、オーストラリアを含む)での地表温度の高分解能測定結果を用いて、熱帯林の林冠温度のピーク値を推定した。この高分解能測定結果は、2018~2020年に国際宇宙ステーションに搭載された機器を用いて得られた。その結果、林冠温度のピーク値は平均で約34℃だったが、ごく一部では40℃を超えていることが分かった。林冠上層の葉の約0.01%は、通常年に光合成能力の低下が始まるとされる温度を超えていた。

また、温暖化実験から、この0.01%という数値は、将来の温暖化条件下で1.4%に上昇すると予測された。さらに、このような将来の気候変動シナリオの下での動態を組み込んだモデルから、気温上昇が3.9℃を超えると、大規模な葉の枯死と減少が発生し始める可能性のあることが示唆された。Doughtyらは、この3.9℃という数値が、最悪のシナリオの下での気候変動予測によって導き出されたことを指摘し、森林の温度を常に限界温度より低く抑えるために役立つ野心的な気候変動緩和目標と森林減少の抑制が必要だとする考えを示している。

doi: 10.1038/s41586-023-06391-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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