Research press release

技術:ドローンレースのチャンピオンと肩を並べたAIシステム

Nature

人工知能(AI)システム「スイフト(Swift)」は、ドローンを操縦して、人間が操縦するドローンとの直接対決に勝利する能力を持つことが明らかになった。このことを報告する論文が、Natureに掲載される。今回の知見は、移動ロボット工学と機械知能にとって画期的成果であり、他の物理システム(自動運転の地上車両、航空機、個人用ロボットなど)へのハイブリッド学習を用いたソリューションの適用を促すことになるかもしれない。

深層強化学習システムは、これまでに、さまざまなゲーム(アタリ社のビデオゲーム、チェス、スタークラフト、グランツーリスモなど)で人間を打ち負かしてきた。しかし、こうした勝利の大部分は、肉体的競技ではなく、シミュレーションやボードゲームの環境に限られていた。FPV(一人称視点)ドローンレースは、プロの競技者が操縦する高速ドローンが3Dレースコースに設定されたゲートを通過しながら飛行するレースで、それぞれのパイロットは、ドローンに搭載されたカメラからストリーミング配信された映像によって、ドローンの視点から見た周囲環境を把握する。自律飛行ドローンが、プロのレースパイロットのレベルに到達することは難しい。ロボットは、物理的限界域で飛行しながら、本体に搭載されたセンサーだけを使って、レースコースにおける本体の飛行速度と位置を推定する必要があるためだ。

今回、Elia Kaufmannらは、現実のドローンを使ったレースで、人間の世界チャンピオンと同等の成績を収めることのできる自律システムを設計した。このシステムは、シミュレーションによる深層強化学習と自然界で収集されたデータを併用している。スイフトは、プロのドローンレースのパイロットが設計した現実世界のレースコースで行われた一連のレースで、2つの国際リーグの世界チャンピオンを含む3人のチャンピオンと競った。人間のパイロットには、このレースコースで1週間練習する機会が与えられ、その後、それぞれのパイロットは、スイフトとの1対1のレースを複数回行った。スイフトは、それぞれのパイロットとのレースで2勝以上を収めて25戦15勝の戦績を残し、人間のパイロットの最高タイムを0.5秒上回るコース記録を樹立した。

同時掲載のNews & Viewsでは、Guido de Croon が、このAI技術の可能性を十分に引き出すには、今後、もっと現実に近い多様な環境に対応するシステムの開発を行う必要があると述べている。また、どのようなレース環境においても人間のパイロットに勝てるようにするには、システムは外的擾乱(風、変化する光の条件、見えにくいゲート、競争相手のドローンやその他数多くの要因)に対処する必要があり、そのいずれもが既存のAI技術にとって、かなり大きな課題であると指摘している。

doi: 10.1038/s41586-023-06419-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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