【がん】ストレスがあるとリンパ系を介したがんの転移が増える
Nature Communications
2016年3月2日
ストレスホルモンは、リンパ系(体内でリンパ液の輸送を担う導管ネットワーク)に悪影響を及ぼすことによって、がんの転移を促進することがマウスの研究で明らかになった。詳細を報告する論文が、今週掲載される。
ストレスのあることが、がん患者の死亡率が上昇することと関連し、かなり進行した段階の動物のがんとも関連していることを示す証拠がある。また、これまでの研究では、ストレスホルモンが、がんの転移にとって重要な血管新生に影響を及ぼすことが報告されている。また、リンパ系は、がんの転移も促進するが、そのことがストレスの影響を受けるのかどうかはこれまでよく分かっていなかった。
今回、Erica Sloanたちは、マウスを使った研究で、リンパ系がストレスホルモンの悪影響を受け、その結果、がん細胞の転移が起こることを明らかにした。今回の研究では、5匹以上のマウスを対象としたいくつかの実験を行い、腫瘍を排出するリンパ管がストレスによって数が増え、直径が大きくなることを明らかにした。Sloanたちは、特殊な顕微鏡を用いて、蛍光標識されたナノ粒子がリンパ系を流れる量がストレスホルモンによって増加することを実証した。また、Sloanたちは、ストレスを感知するタンパク質またはリンパ管の形成を増進するタンパク質の活性を阻害することで、マウスにおけるがんの転移を減らすことにも成功した。
今回のマウスでの研究結果は、がん細胞の転移を抑制する上で、このストレス経路を標的とする方法が有用となる可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms10634
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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