海水準上昇によって数百万の米国人が被害を受ける恐れ
Nature Climate Change
2016年3月15日
今後の海水準上昇によって、米国の沿岸地域に居住する最大1310万人が洪水の被害を受ける可能性があることを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究は、沿岸地域での人口急増を考慮に入れており、洪水の危険が現在の人口に基づいた場合の3倍に達するという考えを示している。予防措置がとられない場合には、多くの人々が移住する必要が生じる可能性があり、20世紀の南部のアフリカ系米国人の大移動に匹敵する規模になると予想されている。
海水準上昇は、社会に対する極めて明白な脅威の1つであり、気候変動が原因となっている。しかし海水準上昇の規模が明らかになっておらず、地域によって地形が異なり、今後の人口変動に不確実要素があるために、洪水のパターンを予測することは難しい。そのため、これまでの研究では、将来的な海水準上昇によって被害を受ける恐れのある人々の数を予測することに悪戦苦闘していた。
今回、Mathew Hauerたちは、さまざまな海抜と洪水リスクと米国の沿岸各州の小規模な人口予測を考慮に入れた地域特異的な環境データと米国海洋大気庁(NOAA)の海水準上昇予測を組み合わせて、この難問に取り組んだ。その結果、2100年に海水準が0.9メートル上昇するというシナリオでは、米国の沿岸地域の住民420万人が洪水の危険にさらされることが判明した。また、NOAA予測で最悪レベルの1.8メートルの海水準上昇では、1310万人が洪水の危険にさらされることも分かった。その約半数がフロリダ州の住民であり、約70%は米国南東部の住民で占められている。
doi:10.1038/nclimate2961
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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