【化学】分子スケールの秘密インク
Nature Communications
2016年5月4日
複数の化学物質の特性を利用して、書かれたメッセージを暗号化し、解読できる新しい分子センサーについて述べた論文が、今週掲載される。このセンサーは、現代の秘密インクとして作用し、そのユーザーが安全に通信する手段となる。この論文では、世界的な電子監視に対する懸念が最近になって生じている中で、このセンサーが電子通信システムを回避する安全な手段になると提唱されている。
過去にも化学物質が秘密インクとして用いられたことがあったが、解読方法が絶えず改良されるために、秘密のメッセージが部外者に読まれてしまうことを防止するのが難しかった。
このほどDavid Marguliesたちが開発した蛍光分子センサーは、独特な蛍光発光スペクトルを生成することによって、さまざまな化学物質を峻別できる。秘密のメッセージを送る者は、まず一般公開されている英数字コードを使って、メッセージ(例えば「開けゴマ」)を数字に変換し、次に、そのメッセージに暗号化キー(無作為に選ばれた化学物質をセンサーに加えることで生成される一意的なパターン)を加え、暗号化されたメッセージを(電子メール、郵便またはその他の方法で)受け手に送る。この受け手は、同じデバイスを持ち、無作為に選ばれた化学物質が何であるのかを知っている必要があり、その化学物質を添加してメッセージを復号化し、メッセージの解読ができるようになる。この方法により、通信を傍受してもメッセージを読むことはできない。Marguliesたちは、12人のユーザー(研修を受けていない10人を含む)に23点のメッセージを解読させて、このデバイスの有効性と簡易性を評価し、全てのメッセージの復号化に成功したことを明らかにした。また、Marguliesたちは、復号化のために金属塩を決まった順序で添加する必要がある化学的パスワードシステムが新たな機密保持の手段になると考えている。
doi:10.1038/ncomms11374
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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