原子レベルで書き換え可能なデータ記憶デバイス
Nature Nanotechnology
2016年7月19日
塩素原子で覆われた銅表面を利用して、1平方インチ当たり500テラビットの密度で情報を記憶できる書き換え可能なデータ記憶デバイスが作製された。この情報密度は、米国議会図書館の全情報を幅0.1 mmの立方体に記憶することに相当する。1キロバイトのデバイスにおいて高い信頼性で書き込み、読み出し、書き換え操作が行われたことが、今週のオンライン版に報告される。
表面上の単一原子は、情報記憶に新しい視点をもたらす。現在、単一原子の位置制御は可能であるが、技術的な限界がある。特に、安定して単一原子を配置するには液体ヘリウム領域の温度(4ケルビン)が必要であり、単一原子の位置を変えるには表面全体を再生する必要がある。
今回Sander Otteたちは、8000個を超える塩素欠陥(原子が抜けた部分)の位置を77ケルビンで40時間以上維持した。欠陥の位置をもとにバイナリアルファベットを定義することにより、表面上にさまざまなテキスト(例えばリチャード・P・ファインマンの講演「There’s plenty of room at the bottom」の一部)を記憶させた後、ビット単位で自在に変えることができた。一回の書き込み・読み出しプロセスの速度は遅い(分のスケール)ため、日常利用が可能になるまでにはデバイス動作の最適化が必要であるが、今回の結果は、最先端のハードドライブに勝るデータ記憶デバイスの原理証明である。
Steven Erwinは、同時掲載のNews & Viewsの記事で、「現行のハードディスクやフラッシュ技術と比較して、2~3桁高い情報密度が得られている。この規模の進歩は注目に値すると言わざるを得ません」と指摘している。
doi:10.1038/nnano.2016.131
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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