【行動】女性器切除に対する文化的態度を変化させる手段
Nature
2016年10月13日
女性器切除(FGC)に関する多様な意見をドラマ化した映画が、特定の文化圏におけるFGCの習慣に対する態度を変化させることがあるという研究結果を報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究では、娯楽を利用して、それぞれの地域におけるさまざまな意見を考察することが、個々の文化圏の内部から穏やかに変化を促す方法となりうることが示唆された。
各国政府と国際機関は、これまで長い間、FGCの廃絶運動を推進してきたが、FGCは今でも広範囲で行われており、それに伴う健康上のリスクが数百万人の少女と成人女性に生じている。この廃絶運動では、FGCが局地的に浸透していることが前提とされていることが多く、この文化圏に別の外部の価値観を導入する必要のあることが暗示されている。そのため、こうした介入は、廃絶運動の対象となる社会の構成員から迷惑な介入と見られ、激しい反発を受けることもある。
今回、Sonja Vogt、Ernst Fehr、Charles Effersonたちの研究グループは、スーダンの農村部で生活する拡大家族に関するソープオペラ風の映画を制作した。この映画には4つのバージョンがあり、いずれも話の本筋は同じで、FGCと無関係なものだった。対照バージョンには、話の本筋しか描かれていなかった一方、他の3つのバージョンには、話の本筋に加えて、個別の価値観(例えばFGCによって健康状態が向上するのかどうか)、結婚可能性(FGCによって結婚の見込みが高くなるかどうか)またはその両方の観点からのFGCに関するさまざまな意見も描かれており、家族がFGCを行わないということを決断して映画は終わっている。
次にVogtたちの研究グループは、スーダンで2つの実験を行った。第1の実験では、5つのコミュニティーの合計189人が、4つのバージョンのいずれかを無作為で割り振られて視聴した。第2の実験では、122のコミュニティー(被験者が合計7,729人)から88のグループを編成して、それぞれのグループに4つのバージョンのいずれかを無作為で割り振った。被験者は、割り当てられた映画を見た後、FGCを行った少女とFGCを行っていない少女に対する態度をさりげなく測定するための潜在連想テストを受けた。Vogtたちは、これらの映画によってFGCを行っていない少女に対する態度が著しく改善されたことを明らかにした。特に価値観と結婚可能性の両方について地域社会に異なる見方が存在する様子が描かれているバージョンで比較的高い持続的効果が認められた。ただし、態度の変化は一度(映画を見た直後またはその約1週間後)しか測定されていないため、この変化の持続性の程度を評価するにはさらなる研究が必要とされる。
同時掲載のNews & Views記事でNicholas Christakisは、「多くのコミュニティーがFGCを廃絶したいと考えている。この重要な研究では、そうしたコミュニティーに役立つような有効で地域に密着した手段が明らかになった」と述べている。
doi:10.1038/nature20100
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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