Research Press Release
【がん】がんの転移を防ぐ薬剤に向けた一歩前進か
Nature
2016年12月8日
がんの転移を促進する特定の細胞型が発見され、マウスモデルの体の一部から別の部分への転移を防ぐ薬物が開発されたことを報告する論文が、今週掲載される。また、この論文では、食餌に含まれる脂質が、がんの転移において重要な役割を果たしていることが明確に示されている。
転移は、がん関連死の主たる原因だが、ほとんどのがんについて、転移の引き金となる細胞が同定されておらず、そのために転移抑制治療の開発が難題となっている。今回、Salvador Aznar Benitahの研究グループは、ヒトの口腔がん検体に含まれる細胞型が脂肪酸受容体CD36を高発現し、マウスにおける転移能が高いことを明らかにした。そしてマウスのがんモデルを用いた実験で抗体を使ってCD36を遮断したところ、転移が有意に減少し、既存の転移巣が明らかに縮小あるいは消失した。
この抗体に転移阻害効果があることは、マウスのがんモデルにヒトの口腔がん細胞を注入する実験だけでなく、ヒトの黒色腫細胞と乳がん細胞の場合にも認められた。この新知見は、腫瘍の転移の基盤に一般的な機構があり、CD36遮断療法の適用範囲が広範なものとなる可能性を示唆している。臨床的には、CD36発現細胞が存在していることが数多くのがんの予後不良と相関しており、マウスモデルにおいて高脂肪食がCD36発現細胞の転移能を高めていると考えられている。
doi:10.1038/nature20791
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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