【研究助成】学際研究の代償
Nature
2016年6月30日
学際性の高い研究プロジェクトは、他の研究と比べて助成金が交付される確率の低いことが明らかになった。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
学際研究は、技術革新を生み出す肥沃な土壌と一般に考えられており、そのために政策レベルで奨励されることが多いが、テーマを狭く絞った研究と比べて、研究助成機関から助成金を受給できる可能性が低いと幅広く認知されている。しかし、この認知を広範なスケールで系統的に検証する試みは行われていなかった。
今回、Lindell Bromhamたちは、2010~2014年にオーストラリア研究会議のディスカバリープログラムに提出された18,476件の研究提案書(芸術、人文科学、自然科学の分野の研究を含む)に関連した助成金データを調べた。そして、Bromhamたちは、このデータを用いて新たな評価指標を開発し、「学際的距離(IDD)」と命名した。IDDには、1つの研究に表現されている複数の研究分野の相対的位置づけとそれらの研究分野間の違いの程度が示されている。その結果、IDDが高いことと助成金の受給成功率は常に負の相関関係にあり、この結果は、申請年度、提案書に記載された研究分野の数、主たる研究分野と無関係なことが判明した。
また、Bromhamたちは、学際研究プロジェクトの助成金受給成功率が低いのは、審査委員がそのプロジェクトの全ての部分を評価する能力がないからだと推測している。また、同じ成功の尺度を用いた場合に、学際研究の提案書の平均的な質が、テーマを狭く絞った研究ほど高くないと考えられることも挙げられる。今回の研究で得られた知見は、学際研究の計画と評価に関する今後の調査の基礎になるといえる。
doi:10.1038/nature18315
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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