【言語】単語の意味の脳内マップ
Nature
2016年4月28日
ヒトの脳内で物語言語の意味がどのように表現されているのかを示した詳細なアトラスについて報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、言語の神経生物学的基盤に関する手掛かりをもたらす可能性がある。
意味情報(言語の意味に関する情報)が単一の脳領域群(「意味システム」と総称される)に表現されているとする学説が提唱されているが、意味システムのネットワークの詳細と広がりについては解明されていない。
今回、Jack Gallantたちは、多彩な意味領域(「食物」、「道具」または「生物」といった密接に関連した概念の一群)を含む発話による物語に誘発される脳の応答を分析した。今回の研究では、7人の参加者に“The Moth Radio Hour”の物語を2時間以上聞かせて、機能MRI(fMRI)データを収集しモデル化して、ヒトの脳内における意味論的意味の機能的表現のマップを作成した。次にGallantたちは、個々のマップに共通する特徴を分析するアルゴリズムを用いて、意味アトラスを生成した。
その結果、意味システムが両側の大脳半球の100以上の領域に広範に分布しており、その複雑な分布パターンが個人間で共通していることが判明した。また、意味システム内の特定の領域に特異的な意味領域が表現されていると考えられている。ただし、Gallantたちは、実験参加者全員が欧米先進国の社会で育ち、教育を受けており、その共通の人生経験が、今回の研究で観察された脳領域の構造の一貫性に寄与した可能性があると考えられる点も指摘している。
doi:10.1038/nature17637
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生物学:全ヒト細胞アトラスの作成Nature
-
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
健康科学:イカに着想を得た針を使わない薬物送達システムNature
-
化学:光を使って永遠の化学物質を分解する新しい方法Nature
-
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications