Research Press Release
【がん免疫療法】コレステロール代謝の調節によってT細胞の細胞傷害本能を高める試み
Nature
2016年3月17日
コレステロール代謝を修飾することで免疫細胞の一種であるキラーT細胞の抗がん活性を高める新しい方法について記述された論文が、今週掲載される。
T細胞の一種であるCD8+ T細胞(キラーT細胞)は、腫瘍細胞のような外来の細胞に浸潤して攻撃を加えるため、抗腫瘍免疫に重要な役割を担っている、しかし、腫瘍は、T細胞の活性を抑制するさまざまな機構によって攻撃を逃れることができるため、CD8+ T細胞の活性を増進させることは臨床的に有益だ。
T細胞のシグナル伝達と機能にとっての非常に重要な調節因子である膜脂質の構成成分の1つがコレステロールだが、今回、Chenqi Xuたちは、コレステロール代謝を修飾することでCD8+ T細胞の抗腫瘍応答を増強できるかどうかを調べ、ACAT1(コレステロールを貯蔵しやすい形に変換する酵素)を欠損したT細胞を有する遺伝子組み換えマウスを作製して、ACAT1の欠損に応じてCD8+ T細胞の抗腫瘍応答が増強されることを明らかにした。また、Xuたちは、いくつかの実験で、アバシミベ(ACAT1阻害剤)を少数のマウスに投与して、がん免疫療法の薬物標的としてのACAT1の可能性を調べた。その結果、腫瘍の増殖が阻害され、生存日数も長くなった。
Xuたちは、この機構を用いることで、免疫チェックポイント阻害など現行の治療法を補完できる可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/nature17412
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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