バーチャル病理学が脳腫瘍の診断を加速させる
Nature Biomedical Engineering
2017年2月7日
手術室での脳腫瘍診断は、がんと正常組織とを識別するポータブル診断スクリーニング技術を利用することによって迅速化させることが可能で、信頼性の向上を見込むこともできる、という論文が、今週のオンライン版に掲載される。
通常、執刀医が原発腫瘍を切除すると、予備的診断および最終診断では病理検査室で腫瘍検体の凍結および染色が行われ、染色した組織を病理学者が評価する。場合によって数十分から数時間を要するその工程の正確度およびスピードは、手術の成功について執刀医に知らせる上で、また患者の予後および管理に関する重要な診断情報を提供する上で、極めて重要なものである。しかし、長い所要時間が手術室の意思決定を遅延させ、必要な組織検体処理が人工産物を生み、希少な腫瘍の分類に誤りが生じる場合もある。
Daniel Orringer、Sandra Camelo-Piraguaたちは、ラマン分光法 (試料の分子的フィンガープリントを示すイメージング技術 )を利用するポータブル技術を考案した。これは、手術室で新鮮な脳腫瘍検体の迅速分析を行い、検体の処理を無用のものとする技術である。その「バーチャル病理学」技術は、従来の染色標本と見分けることができないほどの画像を映し出し、機械学習と併用すると、染色標本と同等の高い正確度(約90%)で脳腫瘍をサブタイプに分類することができる。
実際的な有効性を確認するには臨床試験が必要となるが、この技術は、神経外科医や神経病理学者による手術室での脳腫瘍の切除および診断を支援する可能性がある。
doi:10.1038/s41551-016-0027
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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