【感染症】隠れたHIVリザーバーの発見に役立つバイオマーカー
Nature
2017年3月16日
HIV-1が潜伏するリザーバーを持つ免疫細胞集団を同定し、研究に利用できるようにする細胞表面マーカーが発見されたという報告が、今週掲載される。このバイオマーカーは、持続性を有するHIV-1リザーバーを標的とする有力な治療薬の開発に役立つ可能性がある。現在の抗レトロウイルス療法は、HIV-1の増殖と伝播を抑制できるが、この細胞内リザーバーからHIV-1を根絶することはできない。
CD4 T細胞は、休眠状態のHIVのリザーバーを持つ主要な免疫細胞のタイプの1つだ。今回、Monsef Benkiraneの研究チームは、HIVの非増殖性感染を起こした培養CD4 T細胞(HIVは増殖しない)を調べた。その結果、Benkiraneたちは、この休眠細胞の表面で発現する一方で、HIVの増殖性感染を起こした細胞やHIVに感染していない細胞では発現しないタンパク質(CD32a)を同定し、抗レトロウイルス治療を受けた12人のHIV感染者から採取した血液サンプルを使って、これらの結果を検証した。
以上の結果を総合すると、CD32aが、HIV-1に潜在感染した静止期CD4 T細胞のバイオマーカーの必要条件を満たしていることが示唆されている。リザーバー細胞でのCD32aの発現の機能的意義を解明するためには、さらなる研究が必要とされる。また、HIV-1リザーバーを標的として、その除去を図ることがHIV感染症の治癒に必要と考えられるが、今回の研究は、そうした将来的な治療法に向けた重要な一歩となった。
doi:10.1038/nature21710
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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