Research Press Release
幻覚を生じない大麻
Nature Chemical Biology
2011年4月4日
マリファナの使用で認められる鎮痛作用は、イオンチャネルGlyRに結合する活性要素THCが媒介するものであり、鎮痛特性のみを持つ変異THCの開発が可能である、という研究成果が、Nature Chemical Biology(電子版)で発表される。カンナビノイドによる薬物療法に伴う高度な精神運動障害は、それを鎮痛剤として開発するうえでの制約となっているが、今回の研究で発表された改変型化合物は、そうした副作用が最小化された新薬につながる可能性がある。
マリファナは鎮痛作用と精神活性作用を併有しているが、いずれの作用も活性要素THCによるものと考えられている。精神活性作用は、カンナビノイド受容体CB1Rと結合するTHCが媒介することが知られているが、鎮痛作用に関与するメカニズムは、あまりよく知られていない。L Zhangたちは、THCがGlyRの膜貫通部分と結合し、THCの化学的構成要素とGlyRとの間に特異的な水素結合相互作用が起こることを明らかにした。研究チームは、THCのヒドロキシル基を除去するとGlyRを活性化しなくなった化合物が得られることを見いだした。今回のデータにより、GlyRを活性化する一方でCB1R活性が欠損したTHC類似化合物を設計することが可能となった。
doi:10.1038/nchemb.552
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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