【統計物理学】社会的ネットワークを利用して個人の経済状況を推定する
Nature Communications
2017年5月17日
個人の社会的ネットワーク上の位置を分析することで、その個人の経済状況を数学的に推定できることが明らかになった。このように一定の集団内で個人の財力を判定する方法は、対象を絞った社会的キャンペーンに利用できる可能性がある。この研究結果を報告する論文がこのたび掲載される。
個人間の富の格差は、縁故と利害関係の社会的ネットワークに反映されているという考えは直感的に理解できるのだが、こうした関係を定量化するのは難しい課題となっている。
今回、Hernan Makseたちの研究グループは、メキシコ国民の電気通信データと経済力データを分析し、全ての電話連絡によって形成されたネットワークにおける個人の位置とその個人の経済状況(クレジットカードの利用限度額を基準とする)が高く相関していることを明らかにした。そして、Makseたちは、この考えの妥当性を実証するために、金融商品のマーケティングキャンペーンを実施した。社会的ネットワークの構造に基づいて裕福になることが予想される個人を対象としてキャンペーンを行ったところ、対象を無作為に選ぶ方法と比べて回答率が相当高くなった。
以上の研究結果から、電気通信データにはユーザーに関する定量的情報が豊富に含まれており、対象を絞った社会的キャンペーンに利用できる可能性が実証されている。ただし、Makseたちは、今回の研究で生成または分析されたデータセットがプライバシー保護のために公表されていない点も指摘している。
doi:10.1038/NCOMMS15227
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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