電子工学:1つのチップに多彩な能力を盛り込んだ新しいナノエレクトロニクスシステム
Nature
2017年7月6日
入出力、計算、データ記憶能力を1つの三次元チップに集積し、高いエネルギー効率とデータ効率を実現する新しいタイプのナノエレクトロニクスシステムについて報告する論文が、今週掲載される。このナノエレクトロニクスシステムは、既存のシリコン回路とも互換性があり、今回の研究は、外部メモリとオンチップ論理回路との間でデータを転送する必要があるというコンピューターの大きなネックの克服をめざす研究を支援できる可能性がある。この論文の著者は、このデバイスを実証するため、このナノエレクトロニクスシステムがさまざまなガスと蒸気(例えば、純粋な窒素やレモンジュース、ウォッカとビールから発生する蒸気)を感知し、このセンサーデータを100万以上のRRAMセルに記憶し、カーボンナノチューブを用いた論理回路を使ってデータを分類できることを明らかにした。
コンピューターの計算能力は、過去数十年間に向上を続けてきたが、現行の技術では、大量のデータ処理を必要とし、処理速度を絶えず向上させていく必要があり、この重要な課題が、さらなる性能向上を阻んでいる。
このMax Shulakerたちの研究グループの論文には、いくつかの新興技術からなる三次元ナノエレクトロニクスシステムの原型について説明されている。このシステムは、カーボンナノチューブ製センサーとトランジスターと抵抗ランダムアクセルメモリ(RRAM)という新興メモリ技術と従来のシリコン回路を組み合わせて作られている。その結果、このシステムは、同じチップ上で、外部から大量のデータを収集し、収集されたデータの記憶と処理を行い、高度に処理された情報を出力できる。
同時掲載されるSherief RedaのNews & Viewsでは、今回の研究が究極的には「高性能の人工知能能力を有する埋め込み型スマートカメラ、血流に乗って移動して薬剤を送達するインテリジェントロボット、人工網膜」などの用途の開発に役立つ可能性があると指摘されている。
doi:10.1038/nature22994
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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