Research Press Release
【環境】北極ツンドラの水銀汚染の原因が特定される
Nature
2017年7月13日
北極のツンドラ地帯における水銀汚染の原因が明らかになったことを報告する論文が、今週掲載される。
人間の活動は、北極における大規模な水銀汚染を引き起こしているが、その原因に関する明確な理解が不足している。北極への酸化形水銀の主な供給源は、海塩によって誘発された水銀の化学的循環と降水を介した水銀の湿性沈着だとする考えが示されているが、それらの相対的重要性には疑義が投げかけられている。
今回、Daniel Obristたちの研究グループは、2年間にわたって北極のツンドラ地帯で水銀の沈着量の測定と安定同位体データの収集を行い、北極生態系における水銀の主な供給源を突き止めた。Obristたちは、北極のツンドラ生態系で見つかった水銀の多くが(長距離大気輸送され、全球の大気中に分布する)ガス状の元素水銀であり、全体の約71%を占めていることを明らかにした。水銀の沈着は1年を通して起こり、夏季には植生の取り込みのために増加する。
今回の研究で得られた知見からは、北極のツンドラが大気中の水銀の重要な貯蔵庫として機能し、ツンドラ土壌における高濃度の水銀が、北極の河川から北極海へ毎年大量の水銀が輸送される原因となっている可能性が示唆されている。
doi:10.1038/nature22997
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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