【老化】視床下部が老化を制御する仕組み
Nature
2017年7月27日
健康な視床下部幹細胞を移植することで老化を遅らせることができ、健康な視床下部幹細胞を失うと老化が加速することが、このほど行われた中齢マウスの研究で示唆された。老化には神経系が何らかの役割を果たしていることが知られており、視床下部が特に重要なことが最近の研究で明らかになったが、老化の身体的徴候が生じる正確な仕組みは、まだ解明されていない。この視床下部の影響がヒトにも当てはまるのかどうかを判断するには、さらなる研究が必要とされる。この研究結果について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
成体の神経幹細胞(NSC)は、わずかな数の脳領域(特に視床下部)に存在し、神経新生(ニューロンの形成)と脳機能のいくつかの局面に関与している。神経新生の低下は、老化関連疾患と相関していることが知られている。
Dongsheng Caiたちの研究グループは、最近の研究で、視床下部が全身老化の一因となっていることを明らかにしているが、それを裏付けとして、今回の研究では、いくつかのマウスモデルを用いて、視床下部の神経幹細胞が老化過程の原因なのかどうかを調べた。Caiたちは、このマウスモデルの体内にある特定の幹細胞を欠損させて、老化に似た生理的変化の加速または寿命の短縮を観察した。逆に、中齢マウスに健康な幹細胞を移植したところ、老化が遅くなり、寿命が延びた。また、Caiたちは、視床下部の神経幹細胞が脳脊髄液に分泌するエキソソームマイクロRNAが、この神経幹細胞による抗老化作用の一部に関係していることを明らかにした。Caiたちは、視床下部の神経幹細胞の欠損が全身老化の重要な原因だと結論づけており、この結論によってCaiたちの当初の仮説が補強された。
doi:10.1038/nature23282
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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