Research Press Release
【生態】夜間の人工光が送粉に悪影響を及ぼす
Nature
2017年8月3日
夜間の人工光が送粉の脅威となる可能性を明らかにした論文が、今週のオンライン版に掲載される。この論文では、夜間の人工光が夜間送粉に及ぼす悪影響が日中に活動する送粉者のコミュニティーに広がる可能性が示唆されている。
夜間の人工光は、全世界で普及しつつあり、増加率が年6%と推定されているが、さまざまな生物の生理や行動に悪影響を及ぼすことが明らかになっている。ところが、送粉者コミュニティーなど複数のコミュニティーと送粉に対する影響は明確になっていない。
今回、Eva Knopたちの研究グループは、それぞれ独立した人里の草地(かく乱を受けた土地区画)14か所で実験を行い、そのうちの7区画で移動式街路灯を使って夜間人工照明を行った。この実験では、それぞれの区画で植物と送粉者の相互作用の観察が行われ、夜間照明を実施した区画で送粉者が植物を訪問する回数が62%減少した。また、実験における送粉者の訪問回数が、日中に活動する送粉者の訪問回数とほぼ同じだったにもかかわらず、夜間照明された区画で形成したアザミゴボウ(Cirsium oleraceum)の果実の数は対照区画より13%少なかった。
Knopたちは、夜行性の送粉者が提供する送粉サービスが街路灯の付近で阻害され、その結果として、植物の果実形成率が減っているが、それが日中に活動する送粉者のサービスによって相殺されていない、と結論づけている。
doi:10.1038/nature23288
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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