地中海で海が崩落するさなかの火山活動
Nature Geoscience
2017年9月26日
約600万年前に地中海の水位が低下したことが、この地域で火山噴火の引き金になった可能性があるという報告が今週掲載される。
地中海の海底下には大量の塩堆積物が存在している。この堆積物は、500万~600万年前に地中海が大西洋から孤立して蒸発と海水面低下とを起こしたメッシニアン塩分危機として知られる事象の時に形成されたと考えられている。この時の地中海の海水面低下の速度と量は議論の的となっている。しかしながら、もし海水面低下が劇的で急速であったなら、地球表面の荷重を取り除き、その下のマントルを減圧した可能性がある。そのようなマントルの減圧はマグマ生成を強化し、地表での火山噴火をもたらす可能性がある。
Pietro Sternaiたちは、地質学的データと数値モデル化を組み合わせてこの考えを検証した。彼らはこの地域のマグマ貫入と火山噴火の時期に関する既存のデータを収集し、メッシニアン塩分危機の終わりに向かってパルス的に火山活動が増加したことを示している。研究者は、海水面がキロメートル規模で低下したことにより生じる地表荷重変化を、塩分濃度が極めて高い残った塩水と堆積した塩分の密度上昇による平衡錘を考慮に入れて計算した。彼らは数値モデルを用いて、海水面のそのような変化は荷重を取り除きマントルを減圧して、地中海の火山活動を増加させる引き金となるために十分であることを実証した。
この結果は、メッシニアン塩分危機の際の海水面低下は急速で劇的な規模であったことに独立した支持を提供し、また固体地球内部が表面での変化に敏感であることに焦点を与えている。
関連するNews & Viewsの記事で、Jean-Arthur Oliveは、「この提案された関連性は、地中海地域の火山活動の時期により良い拘束条件を与える高分解能野外データを収集し、リソスフェアとマグマのダイナミクスを連結した革新的手法を開発するためのきっかけを与えるだろう」と述べている。doi:10.1038/ngeo3032
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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