【健康科学】多発性硬化症のマウスモデルの治療に有効な抗うつ剤
Nature Communications
2017年12月20日
進行性多発性硬化症の治療薬としても利用できる薬剤を発見するための経口ジェネリック医薬品の系統的スクリーニングについて報告する論文が、今週掲載される。この論文の著者は、この方法を用いて、多発性硬化症のマウスモデルである自己免疫性脳脊髄炎の症状を軽減する経口抗うつ薬「クロミプラミン」を発見した。
多発性硬化症は、中枢神経系を冒す多因子性炎症性疾患で、ミエリン鞘(脂質に富んだ絶縁体層で神経細胞を保護する)とニューロンを損傷し、重度の神経症状と関連付けられている。多発性硬化症患者の最大15%は、進行性多発性硬化症の患者であり、治療の選択肢が限られている。その理由の1つは、この疾患が神経変性、リンパ球の異常活性、酸化ストレスなど多因子による疾患であるのに、今のところ、これらの因子を同時に標的とした治療薬がない点にある。
今回、Voon Wee Yongたちの研究グループは、1040点の医薬品のライブラリのスクリーニングを行い、血液脳関門を通過できる経口ジェネリック医薬品(249点)を選択した。これら249種類の化合物については、培養細胞において神経毒性を防止し、Tリンパ球の増殖を抑制し、抗酸化活性を有する化合物を発見するためのスクリーニングがさらに実施されて、経口抗うつ薬のクロミプラミンが特定された。クロミプラミンは、マウスの実験において、多発性硬化症のモデルである自己免疫性脳脊髄炎の症状を軽減した。
Yongたちは、進行性多発性硬化症のあらゆる側面を反映したモデルはないが、クロミプラミンが将来的な新薬開発につながり得る薬剤である点を指摘している。
doi:10.1038/s41467-017-02119-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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