【ゲノミクス】再生研究にヒントをもたらす小さなゲノムと大きなゲノム
Nature
2018年1月25日
メキシコサラマンダー(Ambystoma mexicanum、通称アホロートル)と扁形動物のプラナリア(Schmidtea mediterranea)のゲノムについて報告する2編の論文が、今週掲載される。これら2種類の生物の再生能力の遺伝的基盤を解明するための新たな手掛かりがもたらされる。
アホロートルは外肢全体を再生できるのに対し、プラナリアは細かく切り刻まれても体全体を再生できる。こうした再生を可能とする仕組みを解明することは、その根底にある遺伝的機構を探究する研究者の長年の目標になっていた。
今回Elly Tanakaたちの研究グループが塩基配列解読を行ったアホロートルのゲノムは約320億塩基長で、ヒトゲノムの10倍もの大きさであり、これまでに組み立てられたゲノムの中で最大のものだ。Elly Tanakaたちは、将来の研究対象の候補として、再生中の四肢の細胞で大量に発現する遺伝子とマイクロRNA配列を挙げるとともに、多くの動物の発生に必須の遺伝子(Pax3)がアホロートルのゲノムに存在しないことを明らかにした。
一方、Jochen Christian Rinkたちは、約8億塩基長であるプラナリアのゲノムについて報告しており、これは以前に発表された概要ゲノムを改良したものだ。プラナリアのゲノムには、ヒトとマウスの124個の必須遺伝子が欠如しており、例えば、DNA修復に関係する遺伝子と細胞分裂時の正確な染色体の分離に役立つ遺伝子がない。
モデル生物であるアホロートルとプラナリアのゲノムには、反復DNA配列が非常に多く含まれており、そのためゲノム解析が難しい。2つの研究グループは、新しい計算手法を用い、長鎖配列解読技術を併用することで、ゲノムアセンブリの改良を実現した。過去の研究では、胚発生と幹細胞活性に関与することが知られる複数の反復配列がイベリアトゲイモリの再生と関連することが明らかになっているため、この反復配列がこれら2種類のモデル生物において類似の役割を担っているのかどうかが分かれば興味深い。
doi:10.1038/nature25473
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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