【神経変性】アミロイドβの脳内蓄積を予測するバイオマーカー
Nature
2018年2月1日
アルツハイマー病の最も初期の病理学的特徴であるアミロイドβの脳内蓄積を予測する血漿バイオマーカーについて報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、血漿バイオマーカーが1人1人の脳内のアミロイドβの状況を予測する方法として臨床に役立つ可能性が実証された。ただし、一般的な臨床応用までには、時系列データを用いた有効性確認のためのさらなる研究が必要となっている。
現在のところ、脳内アミロイドβ濃度の評価を高い信頼性で行うためには、PET画像法または脳脊髄液中のアミロイドβ濃度の測定を行うしかない。そのため、費用対効果がより高く、侵襲性のより低い診断ツールの開発が急務である。今回、国立長寿医療センター研究所の柳澤勝彦(やなぎさわ かつひこ)たちの研究グループは、免疫沈降と質量分析を組み合わせた方法によって、数種類のアミロイドβ関連ペプチド断片の血中濃度を測定した。その際、柳澤たちは、2つの独立したデータセット(日本で収集された121人分の試料からなる発見データセットと、オーストラリアで収集された252人分の試料からなる検証データセット)を用いた。これら2つのコホートのいずれにも、認知機能の正常な者、軽度認知機能障害のある者、アルツハイマー病患者が含まれていた。そして柳澤たちは、数種類のアミロイドβ関連ペプチド断片の比率と合計値によって、個人の脳内アミロイドβ沈着量を正確に予測できることを明らかにした。
これらの血漿バイオマーカーは、侵襲性が最小限であるとともに、費用便益と拡張性の点で従来の技術より優れており、臨床応用の範囲が広がる可能性がある。例えば、アルツハイマー病の疾患修飾治療薬の臨床試験は、患者がアルツハイマー病の最初期にある場合に最も効果が高いため、これらのバイオマーカーは、適切な臨床試験参加者の選抜に役立つ可能性がある。将来的には、社会経済的地位にかかわらずアルツハイマー病のリスクがある者を特定するための集団検診にこれらのバイオマーカーを活用できる可能性があるが、監視用ツールとしての有用性は、今後の評価を待たなければならないと柳澤たちは指摘している。
doi:10.1038/nature25456
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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