Research Press Release
【神経科学】特定の脳領域を刺激して記憶障害を改善する
Nature Communications
2018年2月7日
外側側頭皮質という脳領域を刺激すると記憶障害が改善することを明らかにした論文が、今週掲載される。
これまでの研究から、ある体験をした時の被験者の脳活動が、被験者がその体験を記憶して後日に思い出せるかどうかの予測に使えることが明らかになっていた。今回のMichael Kahanaたちの研究では、てんかんの臨床監視を受けている25人の患者に対して、リストに列挙された12個の単語を記憶するように指示し、患者がこれらの単語を読んでいる際の神経活動を記録した。次にKahanaたちは、この神経活動データを機械学習アルゴリズムに適用した。このアルゴリズムは、患者1人1人の脳がそれぞれの単語に応答する様子を正確に学習して、各患者がそれぞれの単語を忘れる可能性があるかどうか判定できる。
さらに、この機械学習アルゴリズムを使って、被験者の脳内で記憶の適正な符号化がなされていないことが判明した場合に、外側側頭皮質を電気的に刺激する実験が行われ、その結果、記憶の符号化が回復した。Kahanaたちは、この刺激によって患者が上記の単語を思い出す能力が15%改善されたことを明らかにした。
これらの結果をまとめると、記憶の符号化が適正でない時を判定することが可能となり、外側側頭皮質の刺激によって記憶力が増強されることが明らかになった。このことは、記憶障害などの疾患の治療法としての可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41467-017-02753-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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