パリ協定の目標達成で北極から氷がなくなるリスクは低下する
Nature Climate Change
2018年4月3日
産業革命以降の人為起源の温暖化を1.5℃以下に抑えれば、最大2℃の上昇と比べて、北極が無氷状態になるリスクが大きく低下することを報告する2編の論文が、今週掲載される。この研究結果から、温室効果ガス排出量を削減して、脆弱な北極圏を保全するための取り組みを強化する必要性が強調されている。
気候変動の最も明白な徴候の1つが、北極の海氷域(海氷密接度が15%以上の海域)の大幅な縮小だ。1979年以降、北極の海氷域の年間最小値が毎年9月に観測されており、現在までに約40%縮小した。このことにより、北極が「無氷状態」(9月の海氷域が100万平方キロメートルを下回ること)になる可能性とその時期に大きな関心が集まっている。
今回、Michael SigmondたちのグループとAlexandra Jahnはそれぞれ独立の研究として、パリ協定で提唱された温暖化のしきい値(1.5℃と2℃)において北極が無氷状態になる確率についてのモデルを作成した。いずれの論文でも、人間活動による温暖化を1.5℃に抑えれば顕著な恩恵があることが報告されている。その場合に北極が無氷状態になるのは、約40年に1度のことで、2℃の温暖化となれば3~5年に1度となる。これに対して、現在の各国の排出量削減の誓約から予想される温暖化は3℃であり、これでは北極がほぼ毎年9月に無氷状態になることが予想される。
同時掲載のJames ScreenのNews & Viewsでは、「温暖化を1.5℃に抑えれば2℃の場合と比べて無氷状態になる確率が低下することは明白だが、こうした正確な確率の解釈は慎重に行うべきだ。現実の世界において、地球温暖化に対する海氷の感度は非常に不確かで、気候モデルにおいて海氷の消失速度が正確かどうか評価するのは難しいからだ」というコメントが示されている。
doi:10.1038/s41558-018-0127-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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