【気候科学】地球温暖化のために海洋熱波の頻度が高まる
Nature
2018年8月16日
海洋熱波とは、極端に高い海面水温が長期間継続する現象をいうが、その頻度、空間規模、強度のいずれもが、地球温暖化の結果として増大することを明らかにした論文が、今週掲載される。この論文では、1982年から2016年までに海洋熱波日が倍増しており、地球の気温が上昇を続ければ、海洋熱波日がさらに増加すると予測されることが報告されている。
今回、Thomas Frolicherたちの研究グループは、さまざまな海洋熱波の性質について、過去の変化を分析し、将来の変化傾向を評価した。Frolicherたちは、1982~2016年の日々の全球海面水温のデータと1861~2100年の全球的な地球システムモデル(12個)を用いて、地球温暖化が継続した結果、海洋熱波の頻度、空間規模、強度、期間が増大することを明らかにした。
世界の炭素排出量を削減するための各国の現行政策からは、21世紀末の時点で、産業革命以前と比べて摂氏3.5度の気温上昇となることが予想されているが、Frolicherたちは、もしそうなったときには海洋熱波が発生する平均確率が産業革命以前の41倍になることを明らかにしている。平均すると、海洋熱波の空間規模は21倍になり、その期間は112日に増え、最大強度が摂氏2.5度の上昇になることも明らかになった。ただし、21世紀末の時点で、地球温暖化が産業革命以前と比べて摂氏1.5または2.0度の上昇にとどまれば、上記の増加幅が縮小するとFrolicherたちは指摘している。摂氏1.5度の気温上昇というシナリオでは、海洋熱波の発生確率は摂氏3.5度の気温上昇の場合の40%にとどまる。
doi:10.1038/s41586-018-0383-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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