【古生物学】カメ類の初期の進化過程を解明する手掛かりとなる化石
Nature
2018年8月23日
中国貴州省で新たに発見された三畳紀のカメ種の化石について報告する論文が、今週掲載される。この化石試料は、約2億2800万年前のカメ類の初期の近縁種のものであり、カメ類の複雑な初期の歴史を垣間見せている。
カメ類の起源と系統発生上の類縁関係は、進化生物学で長い間解明できていない問題の1つだ。カメ類のボディープランは派生度が高く、他の分類群の動物との比較によって進化の過程を解明することが難しい。ところが、最近になってカメ類の中間形の化石がいくつか発見された。その1つが約2億2000万年前のOdontochelysで、腹甲(腹部を完全に覆う腹側の甲羅)はあるが、明瞭な背甲(甲羅の「蓋」)はなかった。次に見つかったのが、Odontochelysよりさらに古い2億4000万年前のPappochelysで、腹甲と背甲がない代わりに鱗甲板(腹部を覆う強靭な皮骨)があった。また、南アフリカで発掘された約2億6000万年前の初期爬虫類Eunotosaurusの頭蓋骨の分析から、Eunotosaurusは最終的にカメ類につながる系統から早い時期に分岐した、とする学説が実証された。
今回Chun Li、Xiao-Chun Wuたちの論文では、完全に関節のつながった非常に大きな化石標本(全長2.5メートル)について記述されている。この化石標本には腹甲も背甲もないが、非常に幅広で平らな背側の肋骨が扇状に並んだ構造を有している。この化石標本の動物は、新種とされ、Eorhynchochelys sinensisと命名された。この化石標本は、Odontochelysが発見された堆積層より約7.5メートル深い層から出土し、Odontochelysより古い時代のものであることが示されている。最も際立っているのが頭蓋骨で、Odontochelysよりもカメ類にかなり近く、上側頭窓が閉じており、歯のないくちばしの外表面を覆う角鞘があったことを示す証拠も見つかった。
doi:10.1038/s41586-018-0419-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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