Research Press Release

人工知能:科学的発見を加速させる可能性のあるAI研究アシスタント

Nature

2026年5月20日

仮説の生成、実験の設計、およびデータ分析など、科学研究に関わる複数のプロセスを支援できる2つの人工知能(AI:artificial intelligence)システムを報告する論文が、今週のNature に掲載される。Google DeepMind(米国)およびFutureHouse(米国)がそれぞれ開発したこれらのシステムは、研究者を置き換えるのではなく、科学的発見を加速させるために設計されている。

科学的発見は、斬新な仮説の反復的な生成、実験による検証、そしてデータ分析によって推進される。科学的なトピックの複雑化と相互の関連性が高まるにつれ、特定の分野における深い専門知識に加え、学際的な幅広い知識が求められるようになっている。AIは、研究プロセスの個々のステップを加速させることが示されているものの、単一のシステムによってワークフロー全体を効率化できる可能性がある。Google DeepMindの「Co-Scientist」およびFutureHouseの「Robin」という2つの独立したシステムは、こうしたシステムが科学的発見のプロセスを改善する可能性を実証している。

両AIアシスタントは、マルチエージェントシステムであり、研究プロセス全体をつうじて異なるタスクを実行できる、自律的で専門化された複数のAIエージェントを活用している。このアプローチにより、システムは仮説を生成し、仮説を検証するための実験を提案し、実験結果を解釈し、その結果にもとづいて仮説を精緻化することが可能になる。

Gemini 2.0で構築されたCo-Scientistは、科学的発見のための汎用マルチエージェントシステムである。当初の検証は、生物医学に焦点を当てていたものの、あらゆる科学分野に応用できるよう設計されている。たとえば、Co-Scientistは、白血球の悪性腫瘍である急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukaemia)に対し、新たな薬剤候補や併用療法を提案した。著者であるVivek Natarajanら(Google DeepMind)は、提案された治療法は細胞株実験において有益である可能性が示されたものの、治療法としての有効性を立証するには厳格な前臨床および臨床評価が必要であると指摘している。がん研究以外にも、Co-Scientistは肝線維症の新たな薬剤標的を発見し、抗菌薬耐性の背後にある主要な遺伝的メカニズムを解明した。

一方、OpenAIのo4-miniおよびAnthropicのClaude 3.7の両方を利用するRobinは、実験生物学分野での発見を支援するように設計されている。Samuel Rodriquesら(FutureHouse)は、このシステムを創薬研究に応用している。たとえば、Robinは、先進国における失明の主要な原因である乾性加齢黄斑変性症(AMD:age-related macular degeneration)の潜在的な治療法の特定を促進した。その提案には、標的とする網膜細胞内の可変プロセスの特定や、この疾患の治療にこれまで提案されていなかった薬剤候補の使用提案が含まれていた。また、Robinは根本的なメカニズムを解明するための追跡研究を提案し、それによって新たな潜在的な薬剤標的が特定された。著者らは、こうした治療法については前臨床試験や臨床試験での検証が必要であると指摘している。

両チームはいずれも、これらのシステムが研究者と協働するように設計されており、科学者が常にプロセスに関与し続けることを強調している。両グループによる実世界での実証は、AIエージェントを活用した科学研究の未来がどのようなものになるかを示す好例となっている。

  • Article
  • Published: 19 May 2026

Gottweis, J., Weng, WH., Daryin, A. et al. Accelerating scientific discovery with Co-Scientist. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10644-y

  • Article
  • Published: 19 May 2026

Ghareeb, A.E., Chang, B., Mitchener, L. et al. A multi-agent system for automating scientific discovery. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10652-y

Editorial: Why AI cannot do good science without humans
https://www.nature.com/articles/d41586-026-01551-3

News: Teams of AI agents boost speed of research
https://www.nature.com/articles/d41586-026-01596-4
 

doi:10.1038/s41586-026-10644-y

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度