Research Press Release

医学:兄弟姉妹間の幹細胞移植がHIVの長期寛解と関連する

Nature Microbiology

2026年4月14日

特定の遺伝子変異を持つ兄弟からの幹細胞移植を受けた患者において、HIV(human immunodeficiency virus;ヒト免疫不全ウイルス)の長期的な寛解が達成されたことを報告する論文が、Nature Microbiology にオープンアクセスで掲載される。

HIVは、効果的な治療によってウイルスが抑制されている場合でも、体内のさまざまな組織に存在する細胞のポケットに潜伏し続けることができる。そのため、通常、抗レトロウイルス薬の服用を中止するとウイルスが再活性化してしまう。しかし、これまでに報告されたいくつかの幹細胞移植後の寛解例は、HIVが細胞に感染する際に一般的に利用する受容体を欠失させるCCR5Δ32/Δ32(C-C chemokine receptor type 5;C-Cケモカイン受容体5型)変異を含むドナー細胞の有効性が示唆されてきた。

Anders Eivind Myhre、Marius Trøseidら(オスロ大学病院〔ノルウェー〕)は、2006年に44歳でHIV-1サブタイプBと診断された63歳の男性の検体を分析した。2020年、この男性は血液がんの一種である骨髄異形成症候群の治療のため、CCR5Δ32/Δ32変異を持つ兄弟から幹細胞移植を受けた。その後、移植後24か月を経て抗レトロウイルス療法が中止された。時間の経過とともに、ドナー由来の細胞が、血液、骨髄、および腸組織において患者自身の免疫細胞を置き換えていくことが確認された。移植から2年後に採取された生検標本の分析では、血液や腸の検体から、プロウイルス性HIV DNA(感染細胞のホストDNAに組み込まれたウイルスの遺伝物質)は検出されなかった。著者らが患者から採取した6500万個以上のCD4⁺ T細胞(Cluster of Differentiation 4;分化抗原4)を検査したところ、増殖可能なウイルスは検出されなかった。また、患者にはHIV特異的なT細胞応答も検出されず、移植後4年間でHIV抗体レベルは低下した。ただし、HIVタンパク質の一つであるEnv(Envelope;エンベロープ)タンパク質に対する抗体については陽性のままであった。

これらの知見は、HIVに抵抗性を持つドナー細胞の移植と、体内の各部位における免疫細胞の完全な置換を組み合わせることで、HIVの貯蔵庫を減少または除去できる可能性を示唆している。しかし、各要因が寛解にどの程度寄与したのかを明確に判断することはできず、初期段階で解析可能であった検体数は限られていた。著者らは、幹細胞移植はHIV感染者の大多数にとって現実的な治療法ではないとしつつも、こうした症例を研究することは、長期的な寛解を予測する兆候を特定し、将来の研究の方向性を示すうえで重要であると指摘している。

Myhre, A.E., Meyer-Myklestad, M.H., Gullaksen, H.H. et al. Long-term HIV-1 remission achieved through allogeneic haematopoietic stem cell transplant from a CCR5Δ32/Δ32 sibling donor. Nat Microbiol (2026). https://doi.org/10.1038/s41564-026-02304-8
 

doi:10.1038/s41564-026-02304-8

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度