健康:熱波による米国の健康負担
Nature Health
2026年9月1日
Nature Health に掲載される2つの論文によると、2025年に米国で発生した大規模な熱波では、救急外来受診の10件に1件近くが暑さに起因していた。また、家庭用エアコンの使用により、米国では熱関連死が年間5000件以上回避されている可能性がある。
極端な暑さは、あせもや筋肉のけいれん、重度の熱中症に加え、心血管疾患、呼吸器疾患、および腎臓疾患など、幅広い健康問題と関連している。暑さへの曝露の増加と人口の高齢化により、今後、健康負担の増大が予想されている。そのため、熱関連疾患を迅速かつ正確にモニタリングすることや、冷房へのアクセスを拡大することは、重要な公衆衛生上の対応策である。米国では、エアコンの普及率が約90%と推定されている。一方、家庭用エアコンが比較的普及していない欧州など、世界の多くの地域では、冷房へのアクセスははるかに限られている。
一方の論文では、Amruta Nori-Sarmaら(ハーバードT.H. Chan公衆衛生大学院〔米国〕)が、米国東部19州の電子健康記録から得られた816万9637件の救急外来受診データを分析した。対象期間は、2023〜2025年の各年4〜8月である。著者らは、暑さへの曝露当日とその後4日間を含めて推定した。その結果、2025年6月の熱波期間中の全原因による救急外来受診の9.2%、同年8月の熱波期間中の8.3%が、暑さに起因していたと推定された。これは、それぞれ6986件、6351件の救急外来受診に相当する。
もう一方の研究では、Kai Chenら(イエール大学公衆衛生大学院〔米国〕)が、2010〜2020年に米国本土で発生した2999万1000件の死亡事例を分析した。その結果、家庭用エアコンの使用により、熱関連死が年間推定5267件回避されていたと推定された。また、熱に起因する死亡率は半分以上低下していたことが示された。さらに、家庭用エアコンの使用率が中央値を上回る水準では、健康上の利益が頭打ちになることも観察された。この結果は、エアコンを過剰に使用しても、熱関連死亡に対する追加的な保護効果は得られない可能性を示唆している。
これらの知見は、ほぼリアルタイムの健康データが、熱波などの高温事象への対応策を検討するうえで役立つ可能性を示している。エアコンは、熱関連死亡を防ぐための重要な手段であり続ける一方で、その利益と過剰使用による弊害のバランスを考慮する必要がある。Amruta Nori-Sarmaらは、州レベルの健康データや診断コードを用いた点などを、研究の限界として指摘している。こうしたデータは、熱波の影響を必ずしも正確に捉えているとは限らない。同様に、Kai Chenらは、郡レベルのエアコン利用推計値を用いた点、研究期間全体で2015年の冷房データを用いた点、およびエアコン使用による間接的な弊害を評価していない点を、研究結果の限界としてあげている。
- Article
- Published: 31 August 2026
Nori-Sarma, A., Cartwright, B.M., Zanobetti, A. et al. Impact of the summer 2025 heatwaves on emergency department visits in the USA. Nat. Health (2026). https://doi.org/10.1038/s44360-026-00194-y
- Article
- Published: 31 August 2026
Chu, L., Akkiraju, K., Rao, N.D. et al. Impact of household air conditioning usage on heat-related mortality in the USA. Nat. Health (2026). https://doi.org/10.1038/s44360-026-00184-0
doi:10.1038/s44360-026-00194-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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