気候変動:氷河の消失は21世紀半ばにピークに達すると予測される
Nature Climate Change
2025年12月16日
世界中で毎年消失する氷河の数は、急激に増加し、産業革命前以前の温暖化レベルに応じて、今世紀半ばには、年間2,000~4,000個でピークに達すると予測されていることを報告するモデル研究の論文が、Nature Climate Change にオープンアクセスで掲載される。著者らは、温暖化を1.5℃に抑えることで、2100年までに残存する氷河の数は、2.7℃の温暖化シナリオと比較して2倍以上になり、さらに、4.0℃の温暖化下で予測されるほぼ完全な消失を防げると指摘している。
世界の氷河は、急速に後退しており、この傾向は海面上昇と関連づけられている。しかし、個々の氷河の消失は、文化的、精神的、および経済的な影響ももたらす。氷河は、一部の地域社会で文化的および精神的意義を持ち、年間数百万人の観光客を惹きつけ、下流域にとって重要な水源となっている。
Lander Van Trichtら(スイス連邦工科大学チューリッヒ校〔スイス〕)は、衛星観測による氷河の輪郭をまとめたデータベースから20万以上の氷河を解析し、3つの全球氷河モデルを用いて、産業革命前比で2100年までに1.5℃、2.0℃、2.7℃および4.0℃上昇する4つの温暖化シナリオを検討した。著者らは、「氷河消滅のピーク(peak glacier extinction)」という概念を導入した。これは、消滅する氷河数が最大となる年を指す。結果によると、1.5℃温暖化シナリオでは、2041年に年間約2,000の氷河が消失するピークを迎える。4.0℃上昇シナリオでは、氷河面積および体積の減少がより長期かつ深刻化するためピークは遅延し、2050年代半ばには、年間約4,000氷河に達する可能性がある。欧州アルプスや亜熱帯アンデスなど小規模氷河が支配的な地域では、早期にピークを迎え、今後20年間で氷河の50%が消滅する恐れがある。グリーンランドや南極周辺など大規模氷河が分布する地域では、氷河消失のピークが今世紀後半にずれ込むと予測される。
本研究結果は、生態系、水資源、および文化遺産に影響を及ぼす氷河進化の転換点を明らかにしている。将来の研究で予測がさらに精緻化される可能性はあるものの、2050年代に年間2,000と4,000の氷河が消失するという差は、今日の気候政策決定にかかっていると著者らは論じている。
- Brief Communication
- Open access
- Published: 15 December 2025
Van Tricht, L., Zekollari, H., Huss, M. et al. Peak glacier extinction in the mid-twenty-first century. Nat. Clim. Chang. (2025). https://doi.org/10.1038/s41558-025-02513-9
doi:10.1038/s41558-025-02513-9
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