惑星科学:月面において氷が存在するさらなる候補地
Communications Earth & Environment
2025年3月7日
月の極域のより広い範囲において、表面温度に大きな、しかし局所的な変動があるため、氷は月の表面から数センチメートル下にある可能性がある。インドのチャンドラヤーン3号(Chandrayaan-3)ミッションが2023年に月の表面で直接測定したデータに基づくこの結果を報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。
今後、月面での長期にわたる探査(あるいは居住)は、水の供給源となる氷の存在に依存するものとみられ、氷の形成は、表面温度の影響を直接受ける月面の地域で起こる可能性が高い。月面の温度を直接測定した唯一の過去の例は、1970年代のアポロ計画中に行われたものだった。しかし、これらのミッションは赤道付近に着陸しており、将来の人類によるミッションの着陸地点から数千キロメートル離れており、地形の傾斜が温度にほとんど影響しない場所であった。
Durga Prasadらは、南極域(南緯約69度)の端に軟着陸したチャンドラヤーン3号のヴィクラム(Vikram)着陸機に搭載された温度プローブ実験であるChaSTEによって、月面および10センチメートルの深さで計測された温度を分析した。著者らは、着陸地点の温度が、太陽に面した傾斜角度6°の斜面で355ケルビン(82℃)に達し、月の夜には105ケルビンまで下がったことを発見した。しかし、着陸機から約1メートルの平坦な領域では、332ケルビン(59℃)というより低いピーク温度が測定された。
著者らは、収集したデータを使用して、着陸地点と同様の高緯度にある月の表面温度に傾斜角度がどのように影響するかのモデルを導き出した。このモデルによると、太陽から離れ、最も近い極に向かう斜面では、14°以上の角度を持つ斜面では氷が表面近くに蓄積するほど十分に冷たい可能性があることが示された。これは、NASAの有人アルテミス計画の着陸地点として提案されている月の南極付近を含む月の極の条件と類似している。したがって、著者らは、氷が形成されるかもしれない月の領域は、これまで考えられていたよりも多く、アクセスしやすい可能性があると示唆している。
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- Published: 06 March 2025
K, D.P., Kumar, C., G, A. et al. Higher surface temperatures near south polar region of the Moon measured by ChaSTE experiment on-board Chandrayaan-3. Commun Earth Environ 6, 153 (2025). https://doi.org/10.1038/s43247-025-02114-6
doi:10.1038/s43247-025-02114-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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