Research Press Release

ゲノミクス:ローマ帝国崩壊期にヨーロッパ人の形成に影響を与えた変化

Nature

2026年4月30日

西ローマ帝国の崩壊後、中央ヨーロッパにおける家族構造および人口動態の変化に関する知見を報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。本研究は、かつて遺伝的に異なっていた集団が融合することで新たな社会が形成され、その過程が、現代の中央ヨーロッパに見られる遺伝的景観を形づくったことを示している。

西暦4世紀から7世紀にかけて、中央ヨーロッパでは古代末期から中世初期への移行が進んだ。この移行期は、西ローマ帝国の崩壊やキリスト教の普及といった大規模な社会変動に加え、地域全体の政治情勢の変化を特徴としている。一方で、この時代に生きた一般の人々の日常生活については、これまでほとんど明らかにされてこなかった。

Jens Blöcher、Leonardo Vallini、Joachim Burgerら(ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ〔ドイツ〕)は、南ドイツの古代墓地から出土したローマ後期および中世初期(西暦400~700年)の個体258人分のゲノムを解析した。その結果、ローマ後期において、この地域には遺伝的に異なる2つの集団、すなわち北方の祖先を持つ人々、およびローマ植民地の住民が存在していたことが示された。後者の集団は、遺伝的多様性がきわめて高く、ヨーロッパ全域、さらにはアジアからも祖先を受け継いでいた。ローマ帝国の崩壊は、多くの集団の移動を可能にし、新たな社会の出現をもたらした。遺伝的には多様であったにもかかわらず、地域ごとの異なる集団は相互に混血し、共通の物質文化を共有していたことが示された。

著者らは、男性の平均寿命が43.3歳、女性が39.8歳であったこと、また、出産が女性にとって早期死亡の主要なリスク要因となり得たことを明らかにした。一方で、この地域の子供たちの大半(81.8%)は、少なくとも一人の祖父母とともに成長していたことも判明した。著者らは、キリスト教の台頭により、核家族と生涯にわたる一夫一婦制が重視されていたと指摘している。

著者らは、これらの知見が、ヨーロッパの親族制度の起源を含め、古代末期から中世初期への移行に関する洞察を提供すると結論づけている。また、著者らは、この移行は複雑であり、単に「野蛮人」とローマ帝国の対立という従来の見方だけではとらえきれない複雑なものであったと指摘する。得られたデータは、大規模な民族移動ではなく、家族や親族を基盤とした小規模な集団による移動が行われていたことを示している。

Blöcher, J., Vallini, L., Velte, M. et al. Demography and life histories across the Roman frontier in Germany 400–700 ce. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10437-3
 

doi:10.1038/s41586-026-10437-3

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