Research Press Release

生態学:蝶の翅の模様が捕食者を惑わせる

Nature

2026年10月1日

蝶の対照的な翅の模様は、飛行中に視覚的な錯覚を生じさせ得る。その結果、捕食者が蝶の飛行速度や方向を判断しにくくなることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この知見は、翅の模様と羽ばたきが組み合わさることで、攻撃に対する防御に役立つことを示唆している。

高いコントラストの縞模様やほかの模様は、長い間、「モーション・ダズル(motion dazzle)」を生み出すと提唱されてきた。これは、動く獲物に対する捕食者の見え方を乱すことがある視覚効果である。しかし、シマウマ、ヘビ、およびトカゲなどを対象とした研究では、この理論を裏づける決定的な証拠は得られていない。これまでの研究では、翅や手足が動かない標的がしばしば使われてきた。そのため、こうした動きが捕食者の知覚に及ぼし得る影響は見過ごされていた。

Jolyon Trosciankoら(エクセター大学〔英国〕)は、高速撮影、コンピューターモデリング、進化シミュレーション、および仮想蝶捕獲実験を組み合わせた。これにより、蝶の翅の模様と動きが強い視覚的錯覚を生み出すことを示す証拠を得た。実際の蝶の高速撮影映像を処理し、自然な翅の模様がある条件と模様を除いた条件を比較した。その結果、自然な翅の模様は、デジタル処理で模様を除いた翅よりも、捕食者を惑わせる動きの信号を生み出すことがわかった。アゲハチョウ(swallowtails)、セセリチョウ(skippers)、およびススベニシジミ(sooty coppers)など、ヨーロッパ産397種に由来する757の翅形もシミュレーションした。その結果、対照的な縦縞、単一の帯、および後翅の尾状突起などが、より強い動きの錯覚と関連することが示された。100人が参加した計3000回の仮想蝶捕獲実験では、さまざまな蝶の動画を参加者に提示し、画面をタップして「捕まえる」よう求めた。より強い錯覚を生じさせると予測された模様を持つ蝶では、参加者の攻撃位置がさらに後方へずれた。

この結果は、多くの蝶の翅の模様が、少なくとも部分的には、飛行中の攻撃をそらす方向に進化してきたことを示唆している。著者らは、対照的な模様を持つ、移動するほかの動物でも、同様の効果が生じ得ると考えている。たとえば、鳥が羽ばたかせる翼や、トカゲや魚が素早く振る尾などである。また、今後の研究では、蝶の翅の裏面に加え、より多様な飛行運動、観察角度、距離、および背景を検討する必要があるとしている。

Hancock, G.R.A., Briolat, E.S., Hughes, A.E. et al. Butterfly wing patterns in flight create powerful illusory motion cues. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-11062-w

Nature Podcast: These optical illusions are why butterflies are so hard to catch
https://www.nature.com/articles/d41586-026-03124-w

 

doi:10.1038/s41586-026-11062-w

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