気候変動:南極海の温暖化が熱帯降雨に及ぼす影響
Nature Communications
2025年4月2日
南極海(Southern Ocean)の温暖化は、一部の地域では北極の温暖化よりも大きな影響を及ぼす可能性があり、特に熱帯地域の降雨パターンに影響を与えるかもしれないことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。これらの影響により、脆弱な地域では異常気象や気候変動がさらに深刻化するかもしれない。
極地は地球の他の地域よりも急速に温暖化しており、この現象は極地増幅として知られ、地球の気候に影響を及ぼす可能性がある。北極の温暖化はこれまで広範囲にわたって研究されてきたが、南極を取り囲む南極海の温暖化はより緩やかであり、あまり理解が進んでいない。これまでの研究では、南極海の温暖化が北極海(Arctic Ocean)と比較して相対的に進んでいることが、地域の熱帯降雨パターンに影響を及ぼす可能性が示唆されていたが、その程度については不明であった。
Hyo-Seok Park、Hyein Jeongらは、複数の気候モデルと南極海および北極海の将来の温暖化予測を使用し、21世紀半ばまでの熱帯気候パターンを調査した。この分析は、「中程度の排出量」シナリオ(SSP 2-4.5;SSP = Shared Socio-Economic Pathway〔共通社会経済経路〕)に基づいて実施された。著者らは、南極海の気温が1℃上昇するだけで、北極海の気温が1.5℃上昇した場合と同程度の影響が熱帯地域の降水量に及ぶかもしれないことを発見した。また、熱帯地域全体にわたるこの温暖化の影響の可能性についても調査し、南極海の温暖化はブラジル北東部の降雨量を増加させると同時に、サハラ以南のアフリカのサヘル地域における干ばつリスクを悪化させるかもしれないことも発見した。研究者らは、これらの影響は大西洋の熱帯循環の弱体化に関連するものと同程度か、あるいはそれ以上に顕著である可能性があると指摘している。この研究は、南極海の温暖化が今後数十年間の熱帯気候システムと水循環に強い影響を与えることを示している。
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- Published: 01 April 2025
Jeong, H., Park, HS., Kang, S.M. et al. The greater role of Southern Ocean warming compared to Arctic Ocean warming in shifting future tropical rainfall patterns. Nat Commun 16, 2790 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-57654-4
doi:10.1038/s41467-025-57654-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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