遺伝子工学で蚊を早死にさせる
Nature Biotechnology
2018年9月25日
新しい遺伝子ドライブによって、ケージ中のマラリアを有する蚊の集団を完全に壊滅させられることを報告する論文が、今週掲載される。実験室内の実験では、遺伝子ドライブの拡散を妨げる変異は全く生じなかったので、この遺伝子ドライブは、野外でもうまく働く可能性のある最初の例と言える。
遺伝子ドライブは、子孫への遺伝子の継承に偏りを生じさせることにより、特定の遺伝子をある集団全体に数世代にわたって拡散させるように作られる。蚊では、通常の遺伝子の伝達率は50%程度であるのに対し、CRISPRを用いた遺伝子ドライブでは、子孫の99%に特定の遺伝子を伝播できる。以前の研究で、メスの蚊の繁殖力を低下させるよう設計された遺伝子ドライブは、ケージ中の蚊に広がって集団の個体数を減少させることが示された。しかし追跡実験を行ったところ、この蚊には最終的に遺伝子ドライブに対する抵抗性が生じ、遺伝子ドライブはそれ以上拡散しなくなることが明らかになった。つまりこの遺伝子ドライブは、野外での蚊の駆除には効果がないことになる。
今回Andrea Crisantiたちは、マラリアを媒介するガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)の高度に保存された性決定経路を標的として、CRISPRを用いた新しい遺伝子ドライブを設計した。この遺伝子ドライブは、ケージ中の蚊に急速に拡散するが、抵抗性は生じないことが分かった。この遺伝子ドライブによって、これまで実現していなかった集団の完全な壊滅を引き起こすことができた。
Crisantiたちは、この遺伝子ドライブが急速かつ完全に拡散する上、抵抗性も生じないことから、制限区域内での野外実験に進むことが現実的な次の段階だと述べている。
doi:10.1038/nbt.4245
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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