【遺伝学】英国バイオバンクからの見返りは数々の遺伝学的知見
Nature
2018年10月11日
英国バイオバンクの遺伝学的データを中心に据えた2編の論文が、今週掲載される。これらの論文には、約50万人分のゲノム規模の遺伝学的データ、臨床測定結果、保健記録を含む全データセットに関する説明があり、脳の遺伝的構造に関する知見が示されている。
英国バイオバンクは、登録時に40~69歳だった約50万人の英国人の遺伝的データと臨床データの情報資源であり、健康と各種疾患の遺伝的基盤の研究に役立っている。参加者は2006~2010年に集められ、モニタリングは今後も継続される。バイオバンクに登録された最大のデータセットは、遺伝子型と脳スキャンのデータで、これによって脳の構造と機能に影響を及ぼす遺伝子の研究ができる。
今回、Jonathan Marchiniたちの研究グループは、バイオバンクに登録された8428人の遺伝学的データとMRI脳画像データの解析を行い、遺伝的バリアントとMRIスキャンで同定された特徴(構造容量、病変の大きさ、脳の白質の結合能と微細構造など)の関連を調べた。その結果、鉄分の輸送と貯蔵に関与する遺伝子が、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に関係することがあるなど、さまざまな遺伝的関連が特定された。また、Marchiniたちは、シナプス可塑性と神経繊維の修復に関係すると考えられているタンパク質をコードする遺伝子や、うつ病、多発性硬化症および脳卒中に関与する遺伝子との関連を明らかにした。MRIスキャンにおいて同定された形質の多くには、遺伝性が認められた。この新知見は、脳の発生過程と老化過程だけでなく、さまざまな精神・神経疾患の生物学的基盤に関する我々の理解を深めるものとなっている。
Marchiniたちのもう1編の論文では、バイオバンクに登録された約50万人全員分のデータ(生物学的測定結果、生活様式の指標、画像データなど)の説明が初めて示されている。この情報資源は、関係者以外の研究者にも公開されている。
また、上記論文に関連したNews & Viewsでは、Nancy Cox が「英国バイオバンクには、ゲノムのバリエーションとヒトのありふれた病気との関係性の発見を助け、こうした関連の根底にある機構に関する我々の理解を進めることが期待できる」との見解を示している。
doi:10.1038/s41586-018-0579-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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