家畜と野生動物の共存が有益になる可能性
Nature Sustainability
2018年10月16日
家畜と野生動物を共存させると、ある条件下では、環境にも人間の幸福にも有益になる可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。野生動物は家畜や人間と遭遇すると負けることが多いことから、そうした有益な状況の解明は、大型動物や歴史的風土の維持に不可欠である。
地球全体で見ると、野生動物の大半は保護区外に住んでいるため、野生動物と人間のそれぞれの要求の潜在的な衝突を生み出している。こうした問題の典型例が東アフリカのサバンナで、ここはゾウやキリンなどの野生種の生息地であるだけでなく、人間や家畜の居住地にもなっている。土地利用を巡る対立はありふれたものであり、家畜の管理と野生動物の管理の間には固有のトレードオフがあるという仮説が生まれている。
今回Felicia Keesingたちは、ケニア中央部のサバンナのさまざまな地域を調べ、野生動物が優位な地域、家畜が優位な地域、共存している地域の行く末を比較した。その結果、家畜が野生動物と共存している地域では、ダニの数が減り、飼料になる植物の質が向上するとともに、収入が野生動物ツーリズムと食肉・乳製品の生産の両方を通して得られることが分かった。さらに、家畜と野生動物が共存する地域で、家畜による収入やツーリズムによる収入が減少することはなかった。
保護区は、大型の移動性野生動物の存続可能集団を維持するには小さ過ぎることが多いので、今回の知見は、地球規模で土地を共有して共存していく可能性について楽観視できる1つの理由となる。
doi:10.1038/s41893-018-0149-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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