【海洋生物学】コウイカの知覚状態を皮膚パターンから読み取る
Nature
2018年10月18日
コウイカの皮膚にある数万個の色素細胞の拡大状態をリアルタイムで定量化したことを報告する論文が、今週掲載される。この知見は、コウイカの知覚状態の変化に関連する複雑な生理学的変化(あたかも皮膚が思考をまとったかのような状態)の解明を進めるものと言える。
イカやタコは、皮膚に数多く含まれる色素細胞(色素胞)を制御された形で圧縮することで、表皮の色や見た目の質感を変化させて、擬態や社会的コミュニケーションをしている。これらの色素胞の拡大状態を常時把握できれば、これらの動物の知覚状態をリアルタイムで定量的に記述できるだけでなく、代理指標によって神経系の記述もできる可能性がある。
今回、Gilles Laurentたちの研究グループは、こうした情報を自由行動下のコウイカから得るための計算的方法と解析方法を開発した。Laurentたちは、水槽中の6匹のコウイカを単一細胞レベルの分解能で、数週間にわたって毎秒60フレームで動画撮影し、外套膜の背部にある色素胞の色分類を行った。また、コウイカの上に手をかざして外套膜の色を濃い色から薄い色に変化させることで、外套膜のパターン動態を追跡調査した。Laurentたちは、この動作を何度か繰り返して色の変化を調べた結果、コウイカの外套膜は、刺激の都度、目標とする同じパターンになったと報告している。
Laurentたちは、今回の結果から、複雑な知覚行動を客観的に記述できるようになり、この方法によって、神経系の基盤をなす組織的原理を解明する手掛かりが得られる可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41586-018-0591-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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