【古生物学】ネアンデルタール人の胸郭の復元
Nature Communications
2018年10月31日
ネアンデルタール人の成人男性の胸郭の3次元仮想復元について報告する論文が、今週掲載される。この復元結果の分析では、ネアンデルタール人の胸郭は、現生人類の胸郭と比較すると、サイズは近いが、形状が異なることが示唆された。この結果から著者たちは、ネアンデルタール人の呼吸の機構が現生人類のものとは微妙に異なっていた可能性があるという仮説を提案している。
ネアンデルタール人の肋骨が初めて発見されたのは、今から150年以上前であり、それ以来、その胸郭のサイズと形状が科学的論争の1つのテーマとなってきた。胸郭の形態を巡っては、現生人類とほとんど変わらないとする説から有意な差があるとする説まで、解釈論が幅広く展開されている。
今回、Asier Gomez-Olivenciaたちの研究グループは、これまでに発見されたネアンデルタール人の胸郭の中で最も完全な形で残っているケバラ2(K2)の胸郭の仮想復元を行った。その結果、復元された胸郭の骨格のサイズは現生人類のものと同じくらいだが、胸郭の下部の幅が広いことが分かった。
Gomez-Olivenciaたちは、K2の胸郭下部の直径が大きいことから、横隔膜の表面積が大きかったと示唆している。胸郭下部の幅が広いと、吸息時の胸郭全体のサイズの増分(呼吸容量)が大きくなるという分析結果から、Gomez-Olivenciaたちは、ネアンデルタール人の呼吸の機構は、現生人類よりも横隔膜の収縮に対する依存度が高いという仮説を提起している。
Gomez-Olivenciaたちは、胸郭の進化を解明するためには、新たな化石の発見と研究の積み重ねが必要なことを指摘している。
doi:10.1038/s41467-018-06803-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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