【天体物理学】ブラックホールの進化の解明に役立つ中性子星観測装置NICER
Nature
2019年1月10日
国際宇宙ステーション(ISS)に設置された観測装置を使ったブラックホール系の観測により、このブラックホール系が物質の降着の際にどのように振る舞うのかについて新知見が得られたことを報告する論文が、今週掲載される。この知見から、物質がブラックホールに吸い込まれるとき、X線アウトバーストの発生が、ブラックホール付近のコンパクトなコロナ領域によって制御されていることが示唆されている。
ブラックホールに物質が降着するとき、高エネルギーX線のバーストが発生する。これは、過渡的な事象であることが知られており、その検出をブラックホール系の進化の研究に利用できる可能性がある。この明るいフレアが、降着円盤(ブラックホールに降着する残骸のリング)の上方に位置するコンパクトな領域(コロナ)によって生じるのか、降着円盤自体によって生じるのかは、議論が続いている。
2018年3月にブラックホール新星が新たに発見され、MAXI J1820+070と命名された。今回、Erin Karaたちの研究グループは、ISSに搭載された中性子星観測装置NICER(Neutron Star Interior Composition Explorer)を用いて、X線放射の発生をモニタリングした。Karaたちは、この事象を追跡観察して、ブラックホールを取り囲むコロナが小さくなった反面、降着円盤の大きさがほとんど変わらなかったことを明らかにした。Karaたちは、以上の観測結果から、ブラックホール系が変化する原因が降着円盤の大きさの変化ではなく、コロナの収縮であることが示されたと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0803-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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