Research Press Release
雲の分裂はCO2のレベルの高さと関連していた
Nature Geoscience
2019年2月26日
大気中のCO2濃度が現在のレベルよりも約3倍高くなると、層積雲の雲頂面が分裂する引き金となり得ることを明らかにしたモデル研究が、今週掲載される。このような雲頂面の分裂は、CO2レベルの上昇による温暖化に加えて、全球で最大摂氏8度の温暖化をもたらす可能性がある。
層積雲の雲頂面は、地球の低緯度海洋の約20%を覆っており、地球のエネルギー収支の重要な要素となっている。層積雲は、他の雲と違って地球表面で加熱されるのではなく、雲頂で冷却されることにより維持されるため、地球大気の温室効果ガス濃度の上昇に対して影響を受けやすい。
Tapio Schneiderたちは今回、大気中のCO2レベルが上昇した条件においてエネルギーが最も高い層積雲の雲スケールの過程を解析するための、高分解能シミュレーションを提示している。このような雲スケールの過程は、これまでの気候モデルでは、規模が小さ過ぎて解析できなかった。Schneiderたちのシミュレーションによれば、CO2濃度が1200百万分率よりも高くなると、雲頂面の分裂が起き、全球の平均地表面温度に深刻な影響を及ぼす。さらに、雲頂面は一度分裂すると、より低い温室効果ガス濃度でしか再生しない。
Schneiderたちは、層積雲の雲頂面の分裂は、5000万年前の始新世のような過去の高温の気候の原因となった可能性があると示唆している。
doi:10.1038/s41561-019-0310-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
物理学:塩分を含んだ氷を用いた発電Nature Materials
-
環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらすCommunications Earth & Environment
-
動物学:タコはあらゆる作業に最適な腕を前面に出すScientific Reports
-
気候変動:主要な炭素排出源が熱波の強度と発生確率に影響を及ぼしているNature
-
惑星科学:地球近傍小惑星リュウグウの母天体には長い流体の歴史が存在するNature
-
古生物学:トカゲのような生物の起源をさらに遡るNature