【気候科学】カナダ北極諸島で増えている地すべり
Nature Communications
2019年4月3日
カナダ北極諸島のバンクス島における退行性の融解地すべり(永久凍土の地下氷の融解を原因とする地すべり)の発生件数が、1984~2015年に約60倍に増えたことを報告する論文が、今週掲載される。融解地すべりの発生件数は、1984年には63件だったが、2013年には史上最高の4077件に達した。寒冷な連続永久凍土帯が極端な夏の気候に対して非常に高い感受性を示す可能性についての証拠が増えてきており、今回の研究でもそうした証拠が得られた。
退行性融解地すべりは北極域で発生件数が増えているが、この最近の増加のタイミングや気候変動との関連性については、まだ完全に解き明かされていない。
今回、Antoni LewkowiczとRobert Wayは、グーグルアースエンジンの30年分のタイムラプスデータセットを使って、カナダのバンクス島全土で1984~2015年に発生した退行性融解地すべりを4000件以上突き止めた。そのうち85%以上はとりわけ温暖だった4回の夏(1998年、2010年、2011年、2012年)の後に起こっており、約半数は活発な地すべりが30年以上続いたことが見いだされた。また著者たちは、衛星画像を用いて、バンクス島の285か所の湖が、退行性の融解地すべりを原因とする湖水中の堆積物濃度の上昇により、ダークブルー色からターコイズ色あるいはベージュ色に変化したことを明らかにした。
著者たちは、退行性の融解地すべりの活動を使って、バンクス島から1億トンの氷が失われたという推定結果も得ている。
doi:10.1038/s41467-019-09314-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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