海鳥の格好の餌場になっている沖合の構造物
Communications Biology
2019年4月5日
沖合の人工構造物が海鳥の採餌ホットスポットになっていることを報告する論文が、Communications Biology に掲載される。この知見は、沖合に人工構造物を建設することの生態学的影響を幅広く理解する助けとなる。
アジサシのように海面で採餌する海鳥は、乱流や浅い湧昇を利用して採餌する。乱流があると、餌となる生物が海面近くに集まるので、浅く潜水する技術しか持たない海鳥でも餌を捕らえやすい。沖合の人工構造物は、再生可能エネルギーの生産を目的として建設され、水流系を局所的に変化させる。先行研究から、沖合の人工構造物が魚類の避難場所として利用されることが明らかにされているが、沖合の人工構造物が捕食者である海鳥に及ぼす影響を調べる研究は行われていなかった。
今回、Lilian Lieberたちの研究グループは、後流を作り出す構造物(潮汐発電用タービン構造物、岩石島、天然の渦流構造)から1キロメートル以内で、アジサシ亜科鳥類の採餌パターンを調べた。その結果、人工構造物の上空で採餌を行う個体が3倍多いことが観察され、人工構造物が作り出した乱流後流が水柱全体で物質の混合を引き起こし、餌となる生物を移動させるベルトコンベヤーとして作用している可能性があり、これによって海面で採餌する捕食者が餌を捕えやすくなっていることが明らかになった。
Lieberたちは、今後の沖合構造物の建設とその後の撤去が、これまで考えられていた以上に大きな生態学的影響を及ぼす可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s42003-019-0364-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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