高齢者の脳領域のリズムを同期させて作業記憶を回復させる
Nature Neuroscience
2019年4月9日
脳の側頭野と前頭前野を特異的なリズムで刺激することで、加齢に伴う作業記憶の低下を回復させられるという新知見を報告する論文が、今週される。
作業記憶とは、あとで用いるために情報を短時間保持する能力のことで、加齢によって低下する。作業記憶は、若年成人において、脳領域内と脳領域間の特異な神経相互作用と関連している。この過程には、前頭前野と側頭野におけるガンマリズムとシータリズムという2種類の神経振動(脳波)のパターンが関係していると考えられている。前頭前野と側頭野のシータリズムの同期も作業記憶と関連しており、前頭前野と側頭野の間の長距離の相互作用を促進する可能性がある。
今回Robert ReinhartとJohn Nguyenは、脳波検査(EEG)を使って、こうした相互作用が高齢者においてどのように変化し、作業記憶とどのように関連しているのかを調べた。著者たちは、非侵襲的な脳刺激手順を実施して、作業記憶と関連する個別の脳波相互作用を調整した。
今回の研究では、42人の若年成人(20~29歳)と42人の高齢者(60~76歳)が、脳の刺激を行った状態と行わない状態で作業記憶課題を行い、その成績が評価された。脳を刺激しない場合、高齢者は若年成人より作業記憶課題の遂行が遅く、正確性も劣っていた。若年成人では、作業記憶課題の遂行中に左側頭皮質におけるシータリズムとガンマリズムの相互作用が増強され、前頭前野と側頭野のシータリズムの同期性が上昇していた。
脳の能動的刺激を受けている間、高齢者の作業記憶課題遂行の正確性は改善され、若年成人並みになった。この効果は、脳の刺激を行ってから50分間持続した。課題遂行の正確性が改善されたことは、左側頭皮質におけるシータリズムとガンマリズムの相互作用の増強と相関しており、左側頭皮質と前頭前皮質のシータ脳波の同期性が上昇していた。
今回の成果は、加齢に伴う認知機能低下を標的とする将来的な介入法の基礎となる可能性がある。
doi:10.1038/s41593-019-0371-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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