【地球科学】油田の排水処理によって今後長い間地震が頻発する可能性
Nature Communications
2019年7月17日
大陸での石油とガスの生産に伴う排水の地中への注入速度が低下しても、体に感じる地震の発生が何年も続く可能性があることが明らかになった。このモデルについて報告する論文が、今週掲載される。このモデルは、米国オクラホマ州とカンザス州での排水注入速度が低下した後でも、マグニチュードの大きな地震の頻度は、全地震の頻度よりもゆっくりと低下する可能性があることを示唆している。
油田からの排水の処理は、通常、塩水処理井を経由して深い地層に圧入することによって行われる。この排水処理プロセスによって生じる基岩内の圧力は、閾値に達するまで増加し、地震活動によって解放される。これによって、米国大陸の中央部、特にオクラホマ州とカンザス州では、通常、震源の深さが4~8キロメートルのいわゆる注入誘発地震が発生している。
今回、Ryan Pollyeaたちの研究グループは、数値モデルを用いて、注入された排水の密度が、基岩内の流体よりも高く、そのために排水が以前考えられていたよりも深く岩石内に移動する可能性があることを明らかにした。この数値モデルによる予測では、そのために圧力の回復が著しく遅れ、排水注入速度が低下した後も流体圧力の高い状態が長い間続く可能性があるとされる。Pollyeaたちは、排水注入を減少させ、あるいは中止しても、地震活動が必ずしも減少し、停止するとは限らず、排水注入プロセスが抑制されてから10年間も地震活動が続く可能性があるという考えを示している。この研究知見は、稼働中の油田・ガス田地域における長期計画と地震ハザード評価に影響を及ぼす可能性があるとPollyeaたちは結論している。
doi:10.1038/s41467-019-11029-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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