【公衆衛生】ヒトの胎盤で黒色炭素粒子が観察された
Nature Communications
2019年9月18日
28人の女性を対象とした観察研究が行われて、妊娠中に大気汚染にさらされた女性の胎盤の胎児側に黒色炭素粒子が見つかったことを報告する論文が、今週掲載される。この粒子が胎児へ到達するかどうかを判断するには、さらなる研究が必要となる。
黒色炭素粒子は、日常的に大気中に放出されており、その大部分は化石燃料の燃焼に由来する。この粒子は、妊娠の転帰に有害な影響を与えると理解されており、例えば、早産や出生時低体重と相関している。大気汚染地域での妊娠ケアを改善するには、黒色炭素粒子が、胎児への直接的な影響や母親を介した間接的な影響を通じて、どのように妊娠に影響するのかを解明する必要がある。
今回の研究で、Tim Nawrotたちは、黒色炭素粒子が妊婦の胎盤の胎児側に到達することを示す証拠を得た。高分解能撮像によって、5例の早産と23例の満期産において採取された胎盤から黒色炭素粒子が検出されたのだ。そして、住宅に用いられる黒色炭素粒子に妊娠中に曝露した母親のうち、曝露濃度が高い(1立方メートル当たり2.42マイクログラム)10人の母親の場合の方が、低い(1立方メートル当たり0.63マイクログラム)10人の母親の場合よりも胎盤中の黒色炭素粒子が高濃度だった。
胎盤組織における黒色炭素粒子の蓄積が、妊娠中の大気汚染への曝露に関連する悪影響の原因なのかどうかを解明するには、さらなる研究が必要とされる。
この論文との関連で、Clinical Epigeneticsに掲載されるNawrotたちのReviewでは、大気汚染によって引き起こされる胎盤の分子的変化(エピジェネティックな変化を含む)の概要が説明されている。
doi:10.1038/s41467-019-11654-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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