【惑星科学】星間空間を旅するボイジャー2号からのデータによる最初の論文
Nature Astronomy
2019年11月5日
探査機ボイジャー2号が星間空間に進入したときの初めてのデータを報告する複数の論文が掲載される。これらの論文は、ボイジャー2号が、地球と太陽間の距離の119倍の位置で、2018年11月5日に星間空間への進入したことを立証している。論文では、太陽の最も外側の構造で太陽圏と星間空間の境界であるヘリオポーズの特性の詳細についても示されている。
ボイジャー2号は太陽圏の領域を越えて進む探査機である。こうした探査機はまだ2台しかない。ボイジャー2号は1977年に、双子のボイジャー1号よりもわずかに早く打ち上げられ、これまで42年の間、宇宙を移動していた。ボイジャー1号は2012年に星間空間に進入し、ヘリオポーズの領域について貴重なデータを報告した。しかし、ボイジャー1号のプラズマ計測器の損傷により、太陽圏から星間空間への移行時の完全なデータを収集することができなかった。
ボイジャー2号が星間空間に進入したときの探査機から得られた初期の測定結果が、5編の論文に詳細に述べられており、ボイジャー1号の進入時との類似点や相違点が明らかになった。ボイジャー1号とは異なり、ボイジャー2号の計測機器からの測定結果は、より薄くより滑らかな太陽圏境界と、それを超える強い星間磁場があることを示唆している。John Richardsonらは論文で、ヘリオポーズの通過が1日より短い時間で起こり、境界に最も近い星間物質は予想よりも高温で、より変化に富んでいることを示している。別の研究ではEdward Stoneたちが、太陽風と星間風が相互作用する、ヘリオポーズと星間空間との境界層を示す観測結果を報告している。そのような層はボイジャー1号では観測されていなかった。
これらの結果をまとめると、ボイジャー1号およびボイジャー2号の星間空間への移行でのいくつかの相違点は、太陽活動レベルの変化を原因とする可能性があることや、他に探査機の異なる軌道に関係している可能性があることを示唆している。
星間空間の特性について現在も未解決の問題が存在し、太陽から遠く離れた未探査の領域の構造は議論の対象である。同時掲載されるNews & Viewsでは、R Du Toit Straussが「この議論は、ボイジャー探査機が星間空間をさらに進んだときの探査機からのより直接的な観測や、新しい領域の探査、そして新たな特徴的なデータを送信してくることによってのみ、解決されると考えられる」と述べている。
doi:10.1038/s41550-019-0928-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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